「空蟬処女」(横溝正史)
薄味のラブロマンス、ミステリ仕立て 「空蟬処女」(横溝正史)(「空蟬処女」)角川文庫(「横溝正史ミステリ 短篇コレクション⑥」)柏書房(「消すな蠟燭」)出版芸術社 月を愛でていた「私」の耳に聞こえてきた美しい歌。声の主...
薄味のラブロマンス、ミステリ仕立て 「空蟬処女」(横溝正史)(「空蟬処女」)角川文庫(「横溝正史ミステリ 短篇コレクション⑥」)柏書房(「消すな蠟燭」)出版芸術社 月を愛でていた「私」の耳に聞こえてきた美しい歌。声の主...
「庭」は「彼」の一生 「生涯の垣根」(室生犀星)(「日本文学100年の名作第4巻」) 新潮文庫 「彼」が丹精込めて造り上げた「庭」は、整えられた土と垣根だけであった。土は「彼」の手をくぐりぬけて齢を取っていた。「彼」は庭...
「一番大切な記憶」をどうつくっていくか 「引き出しの奥」(角田光代)(「さがしもの」)新潮文庫 「わたし」は「伝説の古本」を探す。それは正体不明の古い本なのだが、裏表紙にびっしりと書き込みがされてあるのだという。「わたし...
本名は「遠藤平吉」。 「サーカスの怪人」(江戸川乱歩) ポプラ社 「サーカスの怪人」(江戸川乱歩)(「江戸川乱歩全集第20巻」) 光文社文庫 少年探偵団員の井上・野呂の二少年は、ある日の夕暮れ、怪しい骸骨男と遭遇する。尾...
「新しい世界」へ抜け出すための「鍵」 「百年文庫023 鍵」ポプラ社 「塀についたドア H・G・ウェルズ」若き有能な政治家・ウォーレスは、ある晩「わたし」に「塀についたドア」の話をした。それは幻想的・非現実的であり、到底...
いい文章を書きたい 「文章のみがき方」(辰濃和男) 岩波新書 どうすればいい文章を書けるのだろう。そう思い続けてかなりの年月がたちました。何事もそうですが、経験を積み重ねることが大切です。以前は書こうと思っても、書く目的...
石川の狙いはどちらだったのか? 「僕たちの失敗」(石川達三)新潮文庫 「僕」は会社の同僚・伊吹まさ子と結婚する。しかしそれはお互いの生活を束縛しない、同居もしない、3年間の契約で結婚生活を継続し、3年経過後、改めて1年ご...
一人称では筆を進めることはできなかったのでしょう 「紅梅」(津村節子)文春文庫 「夫」は自分が癌であることを周囲に絶対に知られないようにと妻・育子に言い渡す。「夫」は、作家としての仕事を続けながら、癌と対峙していこうとい...
再読のたびに違った二つを顔を見せる作品 「喪神」(五味康祐)(「日本文学100年の名作第4巻」) 新潮文庫 「喪神」(五味康祐)(「百年文庫090 怪」)ポプラ社 十七歳の若い侍・哲郎太は多武峯に隠居している幻雲斎に仇討...
本は、自らを映し出す鏡 「不幸の種」(角田光代)(「さがしもの」)新潮文庫 好きだった「彼」が友人・みなみと付き合い始め、「私」は失恋した。以来「私」は次々と不幸に襲われる。占い師に占ってもらったところ、不幸の種は部屋の...