福島第一原発事故はまだまだ収束などしていない
「福島第一原発事故7つの謎」
(NHK「メルトダウン」取材班)
講談社現代新書
東日本大震災とそれに起因する
福島第一原発事故からすでに
10年という時間が経過しました。
10年前の3月、
原発事故のニュースが
伝えられるたびに
気持ちが重くなっていきました。
「メルトダウン」という言葉自体、
映画やSFの中でのものだという
感覚があり、
現実に起きた事実に大きな衝撃を
受けたことを記憶しています。
私の住んでいる地域は
福島第一原発から
200kmほど離れています。
私の周囲では、
これだけ離れていれば
自分たちは大丈夫という認識の人が
ほとんどでした。
しかし私は
メルトダウンが報じられたとき、
現実問題として
避難する準備をしていました。
チェルノブイリ級の事故
(格納容器破損による
放射性物質の拡散)が
日本で起きた場合、
半径200kmが危険地域になることを
資料で読んで知っていたからです。
本書のもととなった番組・
NHKスペシャル「メルトダウン」でも
取り上げられていましたが、
当時政府の想定した
最悪シナリオとしては
半径250km範囲が
避難対象となっていたそうです。
私の感じた不安は
杞憂ではなかったのでした。
さて本書ですが、番組同様、
事故当時はわからなかったことが、
取材や検証の結果、
明らかになっていった様子が
詳細に説明されています。
TVで何度も水素爆発の映像を
目にしていたことから、
1号機や3号機が
大変な事態であると思っていました。
実は最大の危機を迎えていたのは
2号機だったという事実。
もし2号機の格納容器が
大きく破損していたら、
東日本壊滅につながっていたでしょう。
同様に、
ニュース等で映像が繰り返された、
ヘリコプターや消防車からの
注水活動は、
それなりの効果を上げていたと
思っていました。
それが現場の電源復帰作業を
妨げていただけだったとは。
まさに政治家のパフォーマンス以外の
何物でもありません。
原発再稼働の前に、私たちは
まだまだ知らなければならないことが
たくさんあると思うのです。
本当に私たちの持っている技術は
核エネルギーを制御できるのか。
本当に原発は
二度と事故を起こすことはないのか。
利益を得る者とリスクを負う者とが
分離している状況をどう考えるのか。
福島第一原発事故は
まだまだ収束などしていないことを
私たちにしっかりと認識させる、
重厚な一冊です。
※本書が出版された
2015年に即購入し、初読しました。
その際にyahoo!ブログに投稿した
記事を、今回修正したものです。
(2021.5.13)