「サーカスの怪人」(江戸川乱歩)

本名は「遠藤平吉」。

「サーカスの怪人」(江戸川乱歩)
 ポプラ社

「サーカスの怪人」(江戸川乱歩)
(「江戸川乱歩全集第20巻」)
 光文社文庫

少年探偵団員の
井上・野呂の二少年は、
ある日の夕暮れ、
怪しい骸骨男と遭遇する。
尾行する二人だったが、
骸骨男は町はずれの
サーカスのテントで
忽然と姿を消した。
サーカスの演目も
頂点に達した頃、
客席に骸骨男が姿を現し…。

江戸川乱歩少年探偵団シリーズ
一作です。
これが何作目か、
もうわからなくなってしまいました。
以前取り上げた
「魔人ゴング(妖人ゴング)」
「悪魔人形(魔法人形)」と並行して
昭和32年に書かれた作品です。
三作品とも、
「青銅の魔人」や「宇宙怪人」
「海底の魔術師」のような
コスプレ路線を脱却しているのですが、
中でも本作品には
他と違った特色が見られ、
それが読みどころとなっています。

本作品の読みどころ①
曲芸の腕前を存分に披露する二十面相

舞台はサーカス。
となればこれまで盗みや逃走に
曲芸的な体術を見せつけてきた
二十面相にとって
最もふさわしい場所ともいえます。
綱渡り、空中ブランコはもちろん、
馬や象を乗りこなし、
道化師役も何のその。
水を得た魚よろしくここぞとばかりの
その腕前を披露します。
二十面相が最も二十面相らしい場面が
幾多も現れます。
何度も悪人の侵入を許している
サーカス団のセキュリティの甘さは
昭和30年代ですから
目をつむることにしましょう。

本作品の読みどころ②
念入りな準備をする二十面相

読み進めると、
「なぜサーカス団専用バスに
このような仕掛けを
作ることができたのだ?」
「なぜ団長が最近買い入れた屋敷に
こんな仕掛けがあるのだ?」と
首をかしげざるを得ない部分が
見つかります。
最後に明かされるのですが、
二十面相は今回、
一年以上の時間をかけて
じっくり準備していたのです。
かなり気合いの入った二十面相。
その理由は何か?

本作品の読みどころ③
明かされる二十面相の実名と過去

何と本作品では怪人二十面相の
本名が明かされるのです。
それだけではなく、
二十面相の過去まで暴かれます。
二十面相が真人間から犯罪者へと
転落するきっかけが示され、
そしてその過去の精算こそが
「サーカスの怪人事件」なのです。

本名は「遠藤平吉」
特徴のない、なんと平凡な名前かと、
子ども心に感じた記憶があります。
これをここに掲載すべきかどうか
迷いましたが、近々
「モボ朗読劇『二十面相』
~遠藤平吉って誰?~」
という演劇が
上演されるというので、
思い切って載せてしまいました
(観てみたいのですが、
コロナが怖くて東京へは行けません)。

本名と過去の暴露は、
まるで二十面相シリーズ
最終回のような展開です。
本作品を読まずして
二十面相は語ることができません。
ぜひご一読を。

※二十面相シリーズですが、
 このあと10作程度書かれています。

(2021.5.28)

【青空文庫】
「サーカスの怪人」(江戸川乱歩)

「モボ朗読劇『二十面相』~遠藤平吉って誰?~」

JL GによるPixabayからの画像

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