「RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」(荻原規子)

自らの脳内にその書かれざる世界を

「RDG レッドデータガール
      氷の靴 ガラスの靴」
(荻原規子)角川文庫

冬の鳳城学園で、
急遽企画されたスケート合宿。
それは真響の家系である
戸隠の一派の
仕組んだことだった。
彼らは「チーム姫神」の力量を
確かめようとしているのだ。
真響、真夏そして深行は
その流れに巻き込まれる。
泉水子は…。

先月読み終えたRDGシリーズ全6巻
実はまだ続きがありました。
真響視点でのスピン・オフ作品です。

本作品の読みどころ①
今度は何が起こる?

本シリーズは、
敵とも味方ともつかない存在が
泉水子たちの前に立ちはだかり、
騒ぎを起こすのですが、
そのたびごとに
「何事もなかった形」にして
解決が図られます。
今回もその流れは変化していません。
したがって破滅的な展開にはならず、
事件は起きるのですが、
その前後で状況は
何も変化しないのです。

ただし今回の舞台は
横浜のスケートセンターと
二泊三日のホテル。
学園外であり、
泉水子の結界が作用しないのですから
何かが起こるには格好の舞台です。
さて、どこからどんな相手が現れ、
何を仕掛けてくるのか?
ぜひ読んで確かめてください。

本作品の読みどころ②
三姉弟はどう変容する?

真響視点ですので、
主役は真響・真夏・真澄の
三姉弟になります。
主役であるからには、
そこに人間的な成長がなければ
なりません。
さてどう変わっていくのか?

ネタバレを避けながら説明すると、
大人びて冷静で優秀であるものの
視野狭窄気味だった真響は、
一皮むけます。
真夏はあまり変化は見られないものの、
器が一回り大きくなった
印象があります。
真澄も泉水子への
従属の度合いが大きくなり、
より人間的になるのです。
ではどういうきっかけで
どのように変容するのか?
ぜひ読んで確かめてください。

本作品の読みどころ③
泉水子・深行の仲はどう進展する?

全6巻の最後の最後で
キスまでこぎ着けた超スローペースの
泉水子・深行のカップル。
二人の仲は急速に接近…、しません。
してしまえばもう物語は
そこで終わってしまうのでしょう。
作中の真響も
二人の仲にやきもきするのですが、
それは読み手にも伝わってきます。
では、二人の仲は
どのように深化していくのか?
ぜひ読んで確かめてください。

さて、真響視点の
スピンオフといいながらも、
まったくの続篇です。
なにしろ本編もいわゆる
「大団円」を迎えたわけではなく、
物語はまだまだ続く予感を
見せていたのですから。
あえて「スピンオフ」扱いにしたのは、
物語の筋書きの
進むべき方向性を提示しつつ、
これ以上は続篇を創らないという
作者の意思表示でしょう。
読み手である私たちは、
自らの脳内にその書かれざる世界を
静かに展開していくべきなのです。

本書も含めてRDG全7巻。
中学生にお薦めします。

(2021.7.1)

Free-PhotosによるPixabayからの画像

※RDGの記事です。

※RDG読んでみませんか。

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