明治の先達に負けないような学びと読書を
「わが中学時代の勉強法」(寺田寅彦)
青空文庫
よく保護者から言われます。
「うちの子は勉強のしかたが
分からないから勉強が進まないのです。
勉強のしかたを
教えてあげてください。」
いつも返答に苦慮します。
万人に効果のある学習法など、
あるならこっちが教えてほしいし、
そもそもこう質問する保護者の多くは
子どもにゲームを大量に
買い与えていることが多く、
勉強方法の問題ではないケースが
ほとんどだからです。
さて、科学者や知識人は
どんな勉強をしていたのか。
探してみたら面白いものがありました。
明治時代の物理学者・寺田寅彦です。
科学者でありながら俳人でもあり、
随筆も書く。
学生時代、さぞかし
猛勉強をしたものと思いきや…。
「自分の勉強法は最も不規則で、
また決してたいした
勉強家のほうでもなかった。」
のんびりしていたようです。
でも、ここに注目です。
「いつでも勉強したいと思う時には、
なんの障害もなく、静かに、
悠乎と読書に親しむことができた」。
「めちゃくちゃに読むということは、
無論よいことではなかろうが、
とにかく読書力は非常に養える。
弊害もあれば、またそれからうくる
利益もあるように思う。すなわち
書物をなるべく早く読んで、
それで理解力を養うにはぜひ、
たくさんの書物を読むように
心がける必要がある。」
もしかしたら、
「本を読むこと」と「学ぶこと」は
ほぼ同一のものなのかもしれません。
少なくとも寺田寅彦は、
両者をほぼ同じ文脈で使用しています。
「学力低下」がここ数年来の
新聞やTVのキーワードに
なりつつあります。
その中でも日本語の読解力の低下は、
問題としては深刻でしょう。
日本人が日本語で書かれた文章を読み、
その意味を理解し、書き手の真意を考え、
行動に移す。
そんな当たり前のことが
当たり前にできるように、
子ども・大人の区別なく、
私たちは絶えず「日本語力」を
磨き高めていかなくてはなりません。
そのために必要なことが
「読書」であることは
論を待たないでしょう。
中学生の読む本を見ると、
ライトノベルが
かなり幅を利かせています。
それもいいのですが、
中学生だからこそ、
もっと本格的な読書を、
もっと教養のための読書を、
もっと日本語を磨くための読書を
心掛けるよう
指導していきたいと思います。
いや、
子どもたちだけではありません。
私たち大人も、
明治の先達に負けないような
学びと読書を
しようではありませんか。
(2021.7.9)
【青空文庫】
「わが中学時代の勉強法」(寺田寅彦)
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