「ビブリア古書堂の事件手帳」(三上延)

読書好き・本好きの心を捉えることに成功している

「ビブリア古書堂の事件手帳」
(三上延)メディアワークス文庫

「俺」は祖母の大事にしていた
漱石全集の価値を調べるため
「ビブリア古書堂」を訪れる。
その一冊に漱石の
署名が入っていたからだ。
入院中の若い店主・栞子は
それを即座に偽物と見抜き、
そこに秘められた祖母の思いを
紐解いていく…。

無視しようと決めていたのに…、
ラノベには手を出さないと
決めていたのに…、
ついに読んでしまいました。
本好きの私には
たまらない内容でした。

【主要登場人物】
篠川栞子
…ビブリア古書堂店主。入院中。
五浦大輔
…語り手。23歳。
 ビブリア古書堂の店員となる。
篠川文香
…栞子の妹。

【本作品の構成】
プロローグ
第一話・夏目漱石「漱石全集・新書版」
第二話・小山清
 「落穂拾ひ・聖アンデルセン」

第三話・ヴィノグラードフ クジミン
 「論理学入門」

第四話・太宰治「晩年」
エピローグ

本作品の味わいどころ①
本をめぐるミステリ

古書店を舞台に、
本にまつわる謎を若き店主・栞子が
謎解きするという、
これまで見当たらなかった
シチュエーションの小説です。
4話構成のうち、
第1話第4話は
それぞれ漱石・太宰の古書ですが、
第2話は小山清の
文庫本を取り上げています。
これがまたいいのです。
お宝本ばかりであれば古書マニアの
世界になってしまうところですが、
こうした文庫本にも
スポットを当てることにより、
読書好き・本好きの心を捉えることに
成功していると思います。

本作品の味わいどころ②
つながるエピソード

4つのエピソードが
単独で存在していません。
第4話に向かってつながっていきます。
つながって一つの長編的筋書きとして
成立しているのです。
この「つながり」が大切です。
決して単発で終わる
アニメやマンガのような展開には
なっていません。
こうした緻密な作品構成が、
読書好き・本好きの心を強く捉えることに
成功していると思います。

本作品の味わいどころ③
本好き主人公の魅力

そしてなんといっても主人公・栞子が
魅力的です。
極度の人見知りでありながら、
本の話題になると
嬉々として語り続ける。
人よりも本が好きといわんばかりの
姿勢であり、相当偏った性格です。
通常の小説ではとても主人公など
務まらないでしょう。
しかしその偏った性格だからこそ、
第4話の終末で、
栞子が大輔から別れを告げられる場面も
生きてくるのであり、
読書好き・本好きの心を
より強固に捉えることに
成功していると思います。

と、本好きの立場としての
本作品の魅力を書き綴ってみましたが、
本作品のファンの多くは若い人であり、
本来読書人ではない方が
多いと推察されます。
本好きでない方でも十分に楽しめる、
そこにこそ
本作品の魅力があるのでしょう。

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※恋愛物語としても優れた作品です。
 結ばれそうに見えて、
 最後に別れが訪れる。
 しかしエピローグでは
 うまくいきそうな予感を残す
 (2巻目以降で
 結ばれているようですが)。
 最高です。

※ミステリとしても
 出色の出来映えです。
 それまで探偵役だった栞子ですが、
 終末では大介が
 栞子の心理を解き明かす。
 立場が逆転する面白さ。
 三上延、最高です。

※もっと早く読むべきでした。
 これから2巻目以降を
 読みたいと思います。

(2021.7.26)

moritz320によるPixabayからの画像

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