「戦略的に縮むこと」への意識改革が必要
「未来の年表2」(河合雅司)
講談社現代新書

大ベストセラー本
「未来の年表」の第2弾です。
2017年に発刊された第一作も、
ブームが過ぎた
2019年に読みましたが、
もたもたしているうち、
今年6月に第4弾
「未来のドリル
コロナが見せた日本の弱点」まで
出てしまいました。
慌てて読んだのですが、
やはり面白い、…いや、
背筋が寒くなります。
第一作は人口減少社会を俯瞰し、
日本という国、もしくは
社会でどのようなことが起き、
どのような対策が
必要かということについて
述べられていました。
本作はもっとミクロな視点で、
「私たちの身のまわりで
何が起こるのか」について
解説されてあります。
こちらの方がよりリアルに
捉えることができました。
深刻なのは
「貧乏定年の増大」でしょうか。
私もあと5年で定年を迎えます。
教師という職業柄、
現役段階での準備(副業や
他業種のスキルの習得)など
不可能に近く、
給料を減らされた上で
サービス残業を強いられる再任用に
踏み切るだけの勇気もなく、
さらに介護の必要な子どもを抱えての
老後を考えると、
確かに暗鬱とした気持ちになります。
また、「配送業の破綻」も影響大です。
地方に住んでいると
車なしでは生活できません。
もし車を運転できなくなれば、
我が家の場合、
買い物も半日作業となり、
生活必需品の買い入れだけで
手一杯になる状態です。
ネットによる宅配に頼る部分は
これまで以上に大きくなるはずですが、
それ自体が配送業の破綻につ
ながるのですから事は重大です。
私たちがこれから
考えなければならないのは、
筆者の説く「戦略的に縮むこと」に
ほかなりません。
右肩上がりの成長の時代は
とうの昔に終わったのです。
縮小してもなお快適さを失わない
社会の在り方を模索し、
それに向けて胸を張って
坂道を降りていく覚悟(これについては
平田オリザ氏も著書
「下り坂をそろそろと下る」の中で
述べている)を、
日本人全員が持たなくては
ならないのではないでしょうか。
私の勤務する中学校は、
全校生徒数が70人に満たない、
ごく小規模の中学校です。
予算がきわめて少なく、
必要な教材備品が揃いません。
部活動も生徒会活動も
成立しにくくなっています
(チームを組めない部活動の方が
多い状況)。
地域よりまず先に、地域の学校が
「限界集落化」しています。
生徒も教職員もかつてのような活動の
できないところまできているのです。
ここでも大切なのは
「戦略的に縮むこと」なのでしょうが、
学校現場では「縮むこと」が
簡単には許されず、
常に+αの拡大を求められるのです
(これが学校のブラック化を招く
一因となっている)。
「戦略的に縮むこと」には
意識改革が必要となります。
この本が単なるブームに終わらず、
日本人の意識変革につながることを
期待したいと思います。
(2021.7.27)

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