「はたらく細胞04」(清水茜)

この巻の読みどころは「造形の見事さ」

「はたらく細胞04」(清水茜)講談社

今日もまた雑菌に
襲われている赤血球。しかし
免疫細胞の一種・単球が現れ、
それらを駆除する。
まもなくして
再び襲われる赤血球。
そこに白血球が駆けつけて
応戦するが、
まるで歯が立たない。
なんと相手は
黄色ブドウ球菌だった…。
(第15話 黄色ブドウ球菌)

人気シリーズ
「はたらく細胞」第4巻です。
赤血球・白血球・キラーT細胞など
レギュラー・メンバーを中心に、
この巻も十分に楽しませてくれます。
この巻の読みどころは、
キャラクターや体内環境の
「造形の見事さ」でしょうか。

第15話では、
「単球とマクロファージ」
(どちらも同じもので白血球の一種)が
秀逸です。
血管内での「単球」と
血管外での「マクロファージ」を、
「防護服で身を固めた
怖そうな作業員」から
「鈍器を振り回すお嬢様」へと
描き分けることで、
その変化を見事に表しているのです。

有害物質を感知し、
ヒスタミンを
放出させたマスト細胞。
ところがその行為は
他の細胞たちから
過剰反応と非難される。
その頃、
天井を突き破って異物が現れ、
その先端から血球たちが
次々とさらわれていた。
「蚊」に刺されたのだ…。
(第16話 デング熱)

第16話では、
「ヒステリー姉ちゃん」として
表現された
マスト細胞も面白いのですが、
デングウイルスに感染した
ランゲルハンス細胞を
「天狗」として描いているのも、
駄洒落が効いていて笑えます。
もちろん蚊の針の描写も、
その特質をよくつかんで
デフォルメされてあります。

赤血球もいよいよ
新人赤血球の研修を
担当することになる。
しかし新人は優秀で、赤血球は
自分の未熟さを思い知る。
そんなとき、
血球たちが大量消失し、
酸素運搬が行われないという
事態が起きる。
出血性ショックが起きたのだ…。
(第17・18話 出血性ショック)

第17・18話では、
体内の状況の描出が見事です。
「出血により血球を失った組織内」
「体温低下が起きている状況」など、
的確な表現となっています。
また、「献血」「輸血」の状況を、
赤血球の立場から説明している点も
勉強になります。

腸管内に侵入した
カンピロバクターは、
腸管上皮細胞を人質に取り、
腸管組織の
一部明け渡しを要求する。
手も足も出せない白血球は、
カンピロバクターの要求を
受け入れる。
組織内に進級した
カンピロバクターだったが
そこには…。
(第19話 パイエル板)

第19話はかなりマニアックな
パイエル板を取り上げていますが、
その機能を「だまし討ち酒場」として
表現している点に唸らされます。

漫画といえども侮られません。
難しい生物学・医学の知識を、
擬人化することによって一般人にも
理解できるようにしているのですから。
近年、無視できないほどに
漫画文化が花開いています。
本書のように
エンターテインメントだけでは
終わっていない作品を
探していきたいと思っています。
いや、その前に
第5巻・第6巻を読まなければ。
急げ、書店へ。

(2021.8.3)

Narupon PromvichaiによるPixabayからの画像

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