より身近に「迫り来る危機」を体感できる
「未来の地図帳」(河合雅司)
講談社現代新書
「秋田県の人口62.4%減」
2015年から2045年までの30年間での
人口予測から導かれた数字です。
衝撃的です。
シリーズ第4弾も
発売してしまったため、
急いで読んでみました。
「未来の年表」「未来の年表2」に続く
本書です。
前2作は「年表」の表題が示す通り、
人口減少によって起こりうる
未来の出来事を
時系列として表したものでした。
今回は時間軸を「2045年」に固定し、
そのときまでに日本の各地で
どのようなことが起こりうるのか、
そしてそのために何をなすべきかの
指針が示されています。
したがってより身近に「迫り来る危機」を
体感できるようになっているのです。
本書で体感できる「迫り来る危機」①
地方から東京への人の移動は
これからも止まらないという事実
東京への人口流出が
地方の過疎化を招いているのですが、
それは今後も止まらないという事実が、
「第1部 現在の人口減少地図」に
示されています。
改めて突きつけられると
危機感が募る一方です。
東京はすでに飽和状態となっていると
認識していたのですが、
まだまだ人口の移動は
食い止められないのです。
ということは、地方の過疎化は
一層加速するということなるのです。
本書で体感できる「迫り来る危機」②
地方ほど人口減少の
スピードが高いという事実
それによってどのように日本列島の
状況が変化するのかが
「第2部 未来の日本のランキング」で
述べられています。
東京や政令指定都市、県庁所在地ですら
人口減少が起こるのですが、
地方では過疎化の加速により、
当然人口減少は負の連鎖の如く
急速に進行していくのです。
筆者は人口減少の度合いを
よりよく理解できるよう、
「0~4歳人口」の
変化に着目しています。
それによると「0~4歳人口が
1000人以上の自治体の
この年齢の下落率」を見ると、
なんと私の居住地域が
全国ワースト3に
堂々ランキングしています。
25年後には0~4歳の人口が60%減!
背筋が凍るような数字です。
今でも私の住む地域は
高齢化が進んでいます。
それどころか高齢者の死亡が増え、
家の前の通りは次から次へと
空き家が目立ってきている状態です。
これ以上の少子超高齢化
および人口減少が進むとすれば、
この地域はどうなってしまうのか、
不安でいっぱいです。
本書で体感できる「迫り来る危機」③
国民一人一人に
覚悟が求められているという事実
そして「第3部
それぞれの「王国」の作りかた」では、
その対策についての
説明がなされています。
しかし当然それは個人でどうこうできる
レベルのものではありません。
社会構造そのものを変えていく
作業だからです。
私たち一人一人に求められるのは
「覚悟」です。
縮小しても快適な地域作りのためには、
人口を集約する必要があるのです。
特に高齢者については、
健康であるうちに利便性の高い地域
(各地方の拠点となり得る地域)への
集約が不可欠となります。
そうでなくては
生活インフラ一つとっても
維持が困難になるからです。
ただしそれは自分の住み慣れた
ふるさと(狭い意味で)に
見切りを付けることでもあるのです。
日本列島は厭でもその形を
変えていかなくてはならないのです。
その「覚悟」が
一人一人に問われているのでしょう。
学校現場では相も変わらず
「地域の活性化」「地域の再発展」
「地域の人口増加」を目指した
「ふるさと教育」が盛んです。
しかし今必要なのは、
そうした夢物語を子どもたちに
植え付けさせるのではなく、
「地域の再構築」を現実として
考えさせることだと思うのです。
多くの問題が提起されている一冊です。
大人に向けて書かれた
本だと思うのですが、
前2作とともに、
未来を切り開く
中学生に薦めたいと思います。
(2021.8.18)
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「リアルサイズ古生物図鑑中生代編」
(土屋健)
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