「南島譚」(中島敦)
南洋特有の幻想性が強調された作品群 「南島譚」(中島敦)(「中島敦全集2」)ちくま文庫 昔、パラオのある島に一人の哀れな男がいた。男は島で一番貧しく、権力者のもとで奴隷のように使われていた。しかもその上、病に苦しんでいた...
南洋特有の幻想性が強調された作品群 「南島譚」(中島敦)(「中島敦全集2」)ちくま文庫 昔、パラオのある島に一人の哀れな男がいた。男は島で一番貧しく、権力者のもとで奴隷のように使われていた。しかもその上、病に苦しんでいた...
この読後感は以前にも感じたような… 「天草土産」(上林暁)(「聖ヨハネ病院にて」)新潮文庫 森は三重を伴って二泊三日の温泉旅行へ出掛ける。天草島で二日間を過ごす予定で熊本を旅立ったが、三角港についたときにはその日の船が欠...
現実と夢の境目をぼやかしているかのよう 「オクタヴィ」(ネルヴァル/稲生永訳)(「百年文庫061 俤」)ポプラ社 イタリアを見たいというはげしい欲望にかりたてられたのは、一八三五年春のことであった。意のままにならない恋は...
唯一の手がかりはリルケの「マルテの手記」にある 「名もなき夜のために」(安部公房)(「夢の逃亡」)新潮文庫 夜…消極的に、単に力を奪い去られたような疲労ではなくて、疲れというものが物質のように筋肉の隙間などに浸み込んで来...
未完作品、ところがその続きを読んでいたのでした 「死仮面された女」(横溝正史)(「横溝正史少年小説 コレクション③夜光怪人」)柏書房 その女の命は眼にあった。いくらか碧味をおびた瞳は、深淵のようにすんで、まじまじと物を...
「私」は何を勘違いしていたのか? 「球の行方」(安岡章太郎)(「日本文学100年の名作第6巻」) 新潮文庫 朝鮮から引っ越しして東北の弘前で暮らし始めた、子どもの頃の「私」。学校での成績は不思議と優秀であった。その褒美に...
本好きでなくとも引きずり込まれること間違いなし 「おさがしの本は」(門井慶喜) 光文社文庫 漠然とした不満を抱えながら、和久山は日々、図書館レファレンス・カウンターの仕事をしていた。ある日、レポート作成の資料として林森太...
人殺しもやってのける横溝の悪役キャラクター 「深夜の魔術師(未完成版)」「深夜の魔術師(未発表原稿)」(横溝正史)(「横溝正史少年小説 コレクション③夜光怪人」)柏書房 有名なお金持ち・柚木氏邸で催される仮装舞踏会。そ...
強いて挙げるとすれば「不条理」でしょうか 「ミッツァロのカラス」(ピランデッロ/関口英子訳)(「月を見つけたチャウラ」) 光文社古典新訳文庫 昼食に用意したパンを連日盗まれたチケは、その犯人が鐘を付けたカラスであるという...
まさに「快走」です 「快走」(岡本かの子)(「岡本かの子全集第5巻」)ちくま文庫 花嫁修業を強いられている道子は、夕日を眺めているうち、女学校時代の陸上選手としての感覚が甦る。以来、銭湯に行くと称しては、夜の多摩川堤防で...