過去3作とは異なる趣、丸ごと一冊江戸川乱歩
「ビブリア古書堂の事件手帖4」
（三上延）メディアワークス文庫
古書に関する｢特別な相談｣を
したいという依頼主のもとを
訪れた栞子と｢俺｣。
そこには夥しい数の
江戸川乱歩の稀覯本があった。
依頼主は、これを開けたら
蔵書をすべて譲り渡すと
二人に持ちかける。
その古い金庫の中には
なにやら…。
第4作も読んでしまいました。
人気シリーズ
｢ビブリア古書堂の事件手帳｣です。
この第4作は、これまでの3作とは
やや趣が異なります。
【主要登場人物】
篠川栞子
…ビブリア古書堂店主。
足がやや不自由。
五浦大輔
…語り手。ビブリア古書堂店員。
篠川文香
…栞子の妹。
篠川知恵子
…栞子の母。10年間失踪中。
志田
…常連。せどり屋。ホームレス。
井上太一郎
…同業者。ヒトリ書房店主。
知恵子と関わりがあるらしい。
来城慶子
…依頼主。
田辺邦代
…慶子の妹。
鹿山明
…慶子の所有する乱歩本のもとの
所有者。慶子を囲っていた。故人。
鹿山義彦
…明の息子。
鹿山直美
…義彦の妹。井上の幼馴染み。
ヒトリ書房勤務。
【本作品の構成】
プロローグ
第一章｢孤島の鬼｣
第二章｢少年探偵団｣
第三章｢押絵と旅する男｣
エピローグ
第4作の特徴①丸ごと一冊江戸川乱歩
上の〔本作品の構成〕を
見てわかるように、
これまでとは異なり、
本書すべてが江戸川乱歩に関わる内容で
統一されています。
というよりも、これまでは
連作短編集の形でしたが、
本作品は長編小説です。
栞子がいくつもの謎を解き明かし、
それによって｢鍵｣を見つけ出し、
金庫を開けるまでの
物語となっているのです。
仕掛けも江戸川乱歩的に
整えられています。
いくつもの違った性格を見せる男、
人物の入れ替わり、
奇想天外な隠し場所、
小説の形式に従った暗号文、
巧妙な｢トリック｣、そうしたものが
随所にちりばめられています。
もちろん｢孤島の鬼｣｢江川蘭子｣
｢少年探偵団｣｢悪魔人形｣｢大金塊｣
｢人間椅子｣といった乱歩作品と
その蘊蓄も多数登場し、
乱歩ファンなら一層愉しめる
仕掛けとなっています。
第4作の特徴②知恵子登場、繋がる縁
依頼は単純なものではなく、
依頼主･慶子と鹿山明の男女、
明 と義彦･直美の親子、
そして直美･井上の幼馴染みと、
それぞれの人間関係が
深く関わっていて、
それらを栞子が丹念に解きほぐします。
それだけでなく、
井上と知恵子、
知恵子と栞子･文香の関係も描かれ、
最後には何と志田も知恵子と
浅からぬ縁があったことが
明かされます。
第4作の特徴③栞子と大輔、一歩前進
スローペースで進行していた
栞子と大輔の関係は、
この第4作で一歩前進します。
解き明かされていない乱歩の原稿の謎を
追うために母･知恵子は娘･栞子に
同行するよう迫るのですが、
栞子はすんでの所で思い返し、
その要求をきっぱりと断ります。
「次の休日、
大輔さんとデートですから」。
この場面は素敵です。
本編でのほぼすべてで
謎解きをするのは栞子なのですが、
エピローグでは大輔が
重要な謎解きを見せます。
これによって筋書きはいよいよ
核心へと突入するのでしょう。
結局すべて読んでしまうことに
なりそうです。
とうよりも、すでに第7巻まで
購入してあります。
余韻を十分に愉しんでから、
続きを読みたいと思います。
（2021.11.4）
【ビブリア古書堂の事件手帖】
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