「堂々めぐり」「われ思う、ゆえに…」「野うさぎを追って」(アシモフ)

今こそロボット工学三原則が生かされるべき時代

「堂々めぐり」「われ思う、ゆえに…」
「野うさぎを追って」

(アシモフ/小尾芙佐訳)
(「われはロボット」)ハヤカワ文庫

水星の採鉱施設で、
作業に向かわせたロボット・
スピーディが、
もう5時間の戻ってこない。
施設外は高温のため、
直接の回収は難しい。
信号を解析すると、
スピーディは右往左往を
繰り返している。
命令に忠実なロボットが
どうして…。
「堂々めぐり」

先日取り上げたアシモフ
ロボット短篇集「われはロボット」からの
三篇です。
本書収録の九篇のうち、
先日の「ロビィ」は少女・グローリアの
物語でしたが、
本作三篇はロボット技師・
ドノヴァンとパウエルが
ロボットに振り回される筋書きです。
なお、残り六篇はロボット工学博士・
スーザン・キャルヴィンの
ストーリーです(うち「逃避」には
ドノヴァン&パウエルが登場するが、
脇役の感あり)。

宇宙ステーションで
組み立てられたロボット・
QT1号は、自分が人間によって
組み立てられたことを
信じなかった。
別の創造主が完全な自分と
不完全な人間をつくったのだと
考えるようになったQT1号は、
自らが乗組員の上に立ち…。
「われ思う、ゆえに…」

これらはロボットSFというよりも
ロボット・ミステリというべき
作品なのでしょう。三篇とも、
命令を履行せずに不可解な行動をとる
ロボットたちに対して、
「故障はしていない」という前提に立ち、
「正常に機能しているはずなのに
なぜこのような行動となるのか」を
推理し、
その状況を改善していくものなのです。

鉱山作業用ロボット・DV5号は、
6台のサブ・ロボットを
コントロールする
指揮系統を備えたものだった。
DV5号は人間の目の前では
完璧に仕事をこなしたが、
目を離すと仕事をせずに
サブ・ロボットたちと
サボタージュを始めるが…。
「野うさぎを追って」

これらの作品の根底にあるのが
有名な「ロボット工学三原則」です。
第一条
 ロボットは人間に危害を
 加えてはならない。
 また、その危険を
 看過することによって、
 人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
 ロボットは人間にあたえられた
 命令に服従しなければならない。
 ただし、あたえられた命令が、
 第一条に反する場合は、
 この限りでない。
第三条
 ロボットは、
 前掲第一条および第二条に
 反するおそれのないかぎり、
 自己をまもらなければならない。

この三原則の設定により、
アシモフのロボットSFは、
「人間への逆襲」という
チャペック以来の主題から
解放されるとともに、
ミステリとして成立する要素を
得ることができたのです。
ドノヴァンとパウエルの二人の技師は、
その「三原則」に照らし合わせ、
ロボットたちの不可解な行動の
謎を解いていくのです。

それぞれ1942年、1941年、1944年に
書かれた三篇が描いた
ロボットと人間の関わりは、
80年たった現在、
現実のものとなりそうです。
ロボットという人型ではないものの、
AIを搭載した機器が
多数登場しているからです。
中でも研究が進んでいる
「自動運転」の乗用車は、
それ自体が車型ロボットと
いえそうです。
果たしてすべての人間に対して
「危害を加えない」行動が
できるのかどうか?今こそ
アシモフのロボット工学三原則が
生かされるべき時代となりました。

(2021.12.9)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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