「廃校先生」(浜口倫太郎)

ここに「涙のツボ」があるのです

「廃校先生」(浜口倫太郎)講談社文庫

廃校が決まっている
十津川小学校の三人の六年生は、
卒業式でタイムカプセルを
埋めることを決める。
そこに入れるのは、それぞれが
この一年間頑張ったことの
集大成となるもの。一年後、
担任副担任を含めた五人が
入れたものは…。

廃校が決まった過疎地域の小学校の、
閉校までの一年を描いた感動作です。
浜口倫太郎は放送作家だけあって、
涙のツボをよく押さえています。
読んでいる間、
いたるところで涙が溢れてきました。

【主要登場人物】
十津川小学校
…三月で廃校が決まった
 過疎地・十津川村の小学校。
 全校生徒7名、教職員4名。
黒田香澄
…採用2年目の教諭。6年生副担任。
仲村よし太
…講師。6年生担任。
古坂十夢
…6年生。絵が得意。
田村愛梨
…6年生。アイドル志望。
進藤優作
…6年生。村外の私立中受験希望。

【本作品の構成】
1 黒田香澄
2 古坂十夢
3 田村愛梨
4 進藤優作
5 黒田香澄
6 タイムカプセルに
  入れたよし太の手紙
7 黒田香澄

本作品の「涙のツボ」①
三人の子どもたちの成長に涙

三人の子どもたち一人一人に
焦点が当てられ、「廃校」を
自分自身に関わる大切なこととして
受け止めていく様が描かれています。
第2章では
廃校の決定を覆したい十夢が、
周囲の大人たちの思いに気づき、
「廃校」を受け入れるようになります。
第3章では
芸能界入りして
都会に出て行こうとしていた愛梨が、
母親の過去を知ることにより、
自分の幼さに
思いをいたらせるようになります。
第4章では
私立中学に入学することで
村から出て行こうと
画策していた優作が、
父親の思いに触れることをきっかけに、
地元の中学校進学を選択します。
その三人の成長を促す
きっかけとなっているのが、
すべてよし太の行動なのです。
ここに「涙のツボ」があり、
「教師の理想的な在り方」が
表れているのです。

本作品の「涙のツボ」②
二人の教師のひたむきさに涙

教職2年目の香澄は、ことあるごとに
「教師にむいていない」と
自己分析しているのですが、
やはりひたむきさが
前面に押し出されています。
そして一見だめな教師に見える
よし太こそが
実はもっとも理想的な教師であるという
事実に気づいていくのです。
よし太が採用されなくとも講師として
教職にしがみついている理由が、
丹念に解き明かされていきます。
ここに「涙のツボ」があり、
「繋がる思い」が描かれているのです。

本作品の「涙のツボ」③
学校とは何かの問いかけに涙

小学校の学区住民が
香澄に語りかける一言が、
心を打ちます。
「思うんだよ。学校ってのは
 種火なんじゃねえかって」
「俺達僻地の住民はさ、
 元気がないときは校舎見たり
 子供と話したりして
 元気を取り戻すんだ。
 まるで種火に
 火をもらいに行くみたいだろ」

学校は子どもたちの
「学びの場」として在るだけでなく、
地域の思いが
集約される場所であることが
見事に言い表されています。
ここに「涙のツボ」があり、
「地域と学校の幸福な関係」が
示されているのです。

ぜひご一読ください。
素敵な時間を過ごせるはずです。

(2022.2.7)

【今日のお知らせ2022.2.7】
以下の記事をリニューアルしました。

【今日のさらにお薦め3作品】

【関連記事:学校が舞台の作品】

【浜口倫太郎の本はいかがですか】

created by Rinker
¥970 (2025/03/24 08:30:34時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥1,673 (2025/03/24 08:30:35時点 Amazon調べ-詳細)

【こんな本はいかがですか】

created by Rinker
¥704 (2025/03/24 08:30:36時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥1,056 (2025/03/24 08:30:37時点 Amazon調べ-詳細)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA