はじめての洋書、それもシェイクスピア
「ビブリア古書堂の事件手帖7」
(三上延)メディアワークス文庫

栞子は田中との
約束を果たすため、
古物商・吉原から
太宰治の「晩年」を法外な高値で
買い取らざるを得なくなる。
その吉原は後日、
シェイクスピアの稀覯本で
栞子に謎かけをしてくる。
中身の不明な三冊から
本物一冊を見分けるのだ…。
「ビブリア古書堂の事件手帳」も第7巻、
第1シリーズの最終となりました。
今回も頁をめくる手を
止めることができず、
一気に読み終えてしまいました。
【主要登場人物】
篠川栞子
…ビブリア古書堂店主。
足がやや不自由。
五浦大輔
…本編語り手。ビブリア古書堂店員。
栞子に想いを寄せる。
篠川文香
…栞子の妹。
篠川智恵子
…栞子の母。10年間失踪中。
久我山尚大
…脅迫まがいの取引も厭わない
危険な古書店主。聖司の師匠。故人。
久我山真里
…尚大の妻。ビブリア古書堂の近くに
住んでいる。現在は病床にある。
久我山鶴代
…尚大の娘。
久我山寛子
…鶴代の娘。大輔に怪我を負わせる。
田中敏雄
…太宰の「晩年」書版本をめぐり栞子に
怪我を負わす(第1巻において)。
吉原喜市
…古物商。久我山尚大の最後の弟子。
水城英子
…智恵子の母。栞子・文香の祖母。
水城禄郎
…英子の夫。栞子に相談を持ちかける。
水城隆司
…禄郎の息子。英子は継母。
本作品の味わいどころ①
はじめての洋書、それもシェイクスピア
これまでは小山清の文庫本や
江戸川乱歩の少年探偵団シリーズなど、
もしかしたら私たちの身のまわりでも
存在しうる古書についての
エピソードでした。
今回は洋書です。
それもシェイクスピア。
作家がどうのこうのではなく、
16世紀から17世紀にかけての書物が
テーマとなっているのです。
当然本の構造―
表紙は自ら装幀する、
古書であっても表紙を付け替える、
小口を切り落とし
サイズが小さくなっていく、
そして印刷技術の変遷―
当然活字を拾っての活版印刷、
ミスがあっても紙が貴重であり
やり直しをしないこともある、等々、
その時代の本の蘊蓄が
十分に盛り込まれ、
本というものの歴史について
学ぶことができます。
本好きであれば
楽しく読めること間違いなしです。
本作品の味わいどころ②
シリーズを繋ぐ智恵子と久我山の過去
なぜ智恵子が家族を捨てて
姿をくらましたのか、
その秘密が明かされます。
智恵子と久我山との因縁が明かされ、
それが吉原と栞子へと
引き継がれていく筋書きは見事です。
※おそらく「後付け」なのでしょうが、
シリーズを綻びなく
収束させている点は
素晴らしいと思います。
本作品の味わいどころ③
結ばれる栞子と大輔、
和解する栞子と智恵子
今回はビブリア古書堂が破綻するような
大きな「賭け」が待ち構えています。
吉原から「晩年」を
八百万円で買い取っただけでなく、
本物かどうかわからない
シェイクスピアの本二冊に
計五千五百五十万円も支払わなければ
ならなくなるのですから。
しかし最後に見事な逆転劇が現れます。
そして栞子と大輔は
めでたく(普通に)結ばれ、
栞子と智恵子も
和解することになります。
シリーズはひとまずの
決着を見るのですが、
第2シリーズはすでに3冊目まで
刊行されています。
そちらも楽しみです。
(2022.4.26)

【ビブリア古書堂の事件手帳】
【ビブリア古書堂 第2シリーズ】
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