「横溝正史読本」(横溝正史・小林信彦編)

まさに横溝の前に横溝なし、横溝のあとに横溝なし

「横溝正史読本」
(横溝正史・小林信彦編)
(「横溝正史エッセイコレクション②」)
 柏書房

「横溝正史エッセイコレクション②」

「横溝正史読本」
(横溝正史・小林信彦編)角川文庫

「横溝正史読本」角川文庫

これらの対談が
圧巻であると思うのは、
ホストであるところの
小林信彦氏が以前から私の作品の
読者であったのみならず、
対談に当たってもう一度、
私の代表作ともいうべき作品を
読み返しておくという、
驚くべき熱心さと周到さを…。
「序にかえて」横溝正史

本日2022年5月24日は、
横溝正史の120回目の誕生日であり、
横溝ファンである管理人にとっては、
やはりこの日は横溝作品で飾らねば
ならないと思っていたのですが、
有名作品のほとんどを
取り上げてしまっている今、
迷いに迷って本書を取り上げました。

本書は横溝正史と小林信彦の対談を
中心に編まれた
「横溝正史の秘密」(1975年と76年に
わたって4回行われた対談録)と、
その付録として収録された
当時の未発表エッセイである
「探偵茶話」(1947年に書かれた)、
さらには乱歩・安吾・高木彬光といった
同時代人からの批評集「作品評」から
編まれています。
ここから読み取るべきは、
横溝正史という作家の、
日本探偵小説史、
そして世界ミステリ史における
立ち位置ということです。
特に対談集からは、
横溝作品だけを読んでいては
解らなかった部分が
数多く見えてきます。

〔本書の構成〕
序にかえて 横溝正史
横溝正史の秘密 横溝正史 小林信彦
 第一部
 「新青年」編集長時代から喀血まで
 第二部
 自作を語る
 第三部
 同時代作家の回想
 第四部
 クリスティーの死と英米の作家たち
資料1 探偵茶話
 困った事
 プシューダニム
 ディクタフォーン
 三つの探偵トリオ
 クイーンの大手品
 忠臣蔵とカー
 クリスチー礼讃
資料2 作品評
 「本陣殺人事件」を評す 江戸川乱歩
 「蝶々殺人事件」について 坂口安吾
 「獄門島」について 高木彬光
あとがきにかえて 小林信彦

今日のオススメ!

対談集第一部「新成年編集長時代から
喀血まで」からは、
編集者時代の横溝の、
他の作家との関わりを
知ることができます。
純文学作家である谷崎潤一郎
宇野浩二とのやりとりが書かれてあり、
興味深く読むことができました。
考えてみれば谷崎の「途上」
乱歩に影響を与えた以上、
横溝にも多大な影を落としたはずです。
横溝の「蔵の中」は
宇野の「蔵の中」に原点を見いだせます。

第二部「自作を語る」では、
横溝が多くの海外作品から
着想を得ていることが解ります。
アガサ・クリスティ
エラリー・クイーン、
ディクスン・カーなどは、
海外ミステリに疎い私でも
知っているのですが、
ナイオ・マーシュ、
ニコラス・ブレーク(ブレイク)などは
全く初耳でした。

第三部「同時代作家の回想」からは、
他の作家に対する横溝の視線から、
逆に横溝の日本探偵小説史上の
位置づけが解る仕組みになっています。
取り上げられている作家は、
乱歩、安吾はもとより、
森下雨村小酒井不木甲賀三郎
浜尾四郎、大下宇陀児海野十三
国枝史郎林不忘夢野久作
小栗虫太郎、水谷隼、久生十蘭
木々高太郎高木彬光、鮎川哲也と
多岐にわたっています。

第四部「クリスティの死と
英米の作家たち」では、
やはり同様に
海外の作家たちへの解説が、
逆に横溝自身の作風を
浮き彫りにしている側面があり、
楽しめました。
たまたま対談日の前日に
クリスティが亡くなっていたため、
話題がそこから始まっているのですが、
次第に広く深く語られていきます。

こうしてみると、
改めて横溝が探偵小説史の
特異点であることに気づかされます。
療養前・戦前・戦後の三つの転換点で
大きく分かれる作風の変化、
特に戦前の耽美主義的な作品と
戦後の本格的探偵小説の両方で
頂点を極めた類い希なる想像力、
一時期のスランプはあったものの
それを乗り越えて晩年まで書き続けた
旺盛な創作力、
改稿に改稿を重ねて
作品を進化させる完璧主義的視点。
まさに横溝の前に横溝なし、
横溝のあとに横溝なし、なのです。

本書はまず1976年に
単行本として刊行されました。
このときの表紙は
杉本一文の装幀画なのですが、
文庫本の「犬神家の一族」を
流用したものでした。
1979年に文庫化するのですが、
初版は赤枠のカバー装丁でした。
その表紙はこちらです。

「横溝正史読本」昭和版ver.1

そして重版からは他の横溝作品同様の
黒地仕様となりました。

「横溝正史読本」昭和版ver.2

さらには2008年に、角川文庫新版に
編入され再版発行されています
(冒頭の写真)。
この新版も絶版となっているようで、
書店では見かけなくなりました。
ところが本書をはじめとする
横溝のエッセイが、
やはり柏書房から
刊行される運びとなりました。
今日がその発売日。
これこそまさに生誕120年を祝うに
ふさわしい企画です。
値段が張るのが玉に瑕(全3巻で
税込み合計19800円)ですが、
こればかりはやむを得ないでしょう。
予約しましたので、
今日の午後か明日中には
届くと思うのですが、待ち遠しくて
今日は仕事が手につかないでしょう。
横溝正史を十分に
味わい尽くしたいと思います。

(2022.5.24)

〔追記〕
5月24日の発売予定が27日へと
ずれ込んだ柏書房
「横溝正史エッセイコレクション」が
昨日到着しました。
これからじっくり読みたいと思います。

(2022.5.31)

〔娘のつくった動画もよろしく〕
こちらもどうぞ!

墓村幽の味わえ!横溝正史ミステリー

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(2024.3.20)

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