これからの生き方を考えるための一冊
「還暦からの底力」(出口治明)
講談社現代新書

私はまもなく56歳となります。
退職まであと4年だったのですが、
公務員の定年が延長となり、
私の場合は64歳まで
働けるようになりました。
ただし60歳を超えると
給料は3割ほど減額されるようですが、
致し方ないでしょう。
現在も60歳で定年を迎えた先輩が
「再任用」という形で
働いているのですが、
それよりは条件的には良いようです。
さて、問題は定年延長を含めた
「働き方」と「生き方」について、
しっかり考えておく必要が
あるということです。
誰しもが一抹の不安を
感じているからこそ、近年、
定年退職後の生き方に焦点を当てた本が
ベストセラーになるのでしょう。
本書もそうした一冊です。
以前、
楠木新氏による「定年後」(中公新書)を
取り上げました。
そちらは系統的な記述でしたが、
本書はどちらかというと
話題があちこちにそれながら、
筆者が自分の考えを述べている
本のように感じます。
それでいながら、心に響く一節が、
随所にちりばめられていて、
勉強になりました。
「高齢者は「次世代のために
働くこと」に意味があり、
次世代を健全に育成するために
生かされていると考えるべき」。
もしかしたら
批判の集まる部分かも知れません。
しかし、生命と文明のバトンを
次の世代へと引き継ぐことを考えると、
私を含めた50歳以上の世代は、
その「バトンソーン」に
差し掛かろうとしているのです。
「次の走者が受け取りやすい
バトンタッチ」を
考えるべきなのでしょう。
だからといって、
高齢にむち打って働けと
いっているのではありません。
「少子高齢化社会においては
ヤング・サポーティング・オールドから
オール・サポーティング・オールへの
発想の転換が必要」。
筆者は社会構造の変革も
求めているのです。
そのためには「年齢フリー」の世の中へと
移行することの大切さも述べています。
その一つが、年齢に縛られない
「挑戦意欲」ということでしょうか。
「お金の心配をあれこれするよりも、
自己投資にお金を使い、
自分ができることを増やして
豊かな生活を送るほうが
ずっと大切」。
いくつか事例が紹介されています。
「いくつになっても挑戦は可能」という
前向きな気持ちが起こる一方で、
「それは困難なのではないか」という
不安も同時に沸き起こります。
それも含めての「挑戦」なのでしょう。
こんな言葉も用意されています。
「明日に先送りしたら
1日年を取るのだから、
何でも今すぐに
早く始めたほうがいい。
いまこの時のあなたが
一番若いのに、
なぜ今すぐ始めないのか」。
確かにその通りです。
若返ることは誰しも不可能なのですが、
明日以降の自分と比べれば、
今日の自分が最も若くて
エネルギーを持っているのです。
一歩を踏み出す
勇気を持つべきでしょう。
著者・出口治明氏は実業家であり、
ライフネット生命保険株式会社創業者
(現在は代表取締役会長兼CEO)として
有名です。
また立命館アジア太平洋大学学長でも
あります。
経済界の人間であるため、
物事を経済に結びつけて考える
傾向があり、もしかしたら
読んで嫌悪感を抱く方も
いるのではないかと思われます。
しかしながら、
経済の側面から
考えなければならないことが
世の中に多いのは事実であり、
経済から切り離してしまえば
ただの理想論に陥ってしまいます。
経済は「豊かな生活」のための
一つの指標であり、
無視できるものではないのです。
かといって本書に書かれてあることを
「鵜呑み」にするのもどうかと思います。
本書で筆者が
繰り返し述べているように、
「自分で考える」姿勢こそが
最も大切です。
本書を参考に、
これからの生き方を考えてみませんか。
〔本書の主な内容〕
・悲観論は歴史的に全敗している
・置かれた場所で咲けなかったら
・清盛・義満・信長に学ぶ生き方
・定年制も敬老の日もいらない
・老後に資金はいらない
・高齢者は次世代のために生きている
・人生で絶対に読むべき6冊の本
・人間は猪八戒のようなもの
・一番の親孝行は
「親に楽をさせない」こと
・子供は18歳を超えたら
家から追い出せ
・「数字・ファクト・ロジック」が
重要な理由
・長く続いた伝統と慣習は大切にする
・年齢の縛りから自由になる
・「飯・風呂・寝る」から
「人・本・旅」の人生へ
(出版社HPより)
(2022.5.31)

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