「蟻の自由」(古山高麗雄)
わずかに残された「人間としての尊厳」 「蟻の自由」(古山高麗雄)(「日本文学100年の名作第6巻」) 新潮文庫 少年のころ僕は、家の庭を這っていた蟻を一匹つかまえて、目薬の瓶に入れて、学校に持って行って放したことがあるの...
わずかに残された「人間としての尊厳」 「蟻の自由」(古山高麗雄)(「日本文学100年の名作第6巻」) 新潮文庫 少年のころ僕は、家の庭を這っていた蟻を一匹つかまえて、目薬の瓶に入れて、学校に持って行って放したことがあるの...
清く正しい出版社・ポプラ社らしからぬ一冊 「百年文庫032 黒」ポプラ社 「牧師の黒のベール ホーソーン」司祭フーパーはある日、黒いベールで顔を覆って説教壇に立つ。村は騒然となり、非難と噂が飛び交う。教会の代表者たちや、...
国の文化の成熟の指標は「図書館の在り方」 「夢見る帝国図書館」(中島京子) 文春文庫 久一郎は憤慨のあまり、椅子から転がり落ちそうになった。「本がない?」彼は二十三歳の若き文部省官吏であり、彼の書籍への思いの熱さは相当な...
謎解きを通して提示される「女性の生き方」 「夢見る帝国図書館」(中島京子) 文春文庫 「上野の図書館のことを書いてみないか」。上野公園で出会った喜和子さんから、そう持ち掛けられた作家の「わたし」。図書館が主人公の小説を書...
金田一耕助の事件簿036b 驚愕する金田一、スピーディな幕切れ 「毒の矢(原形版)」(横溝正史)(「金田一耕助の帰還」)光文社文庫 緑ヶ丘一帯に届けられた、「黄金の矢」を語る差出人による悪意に満ちた密告状。悪戯と考えられ...
金田一耕助の事件簿036 金田一耕助、緑ヶ丘に惹かれる 「毒の矢」(横溝正史)(「毒の矢」)角川文庫 緑ヶ丘一帯に届けられた、「黄金の矢」を語る差出人による悪意に満ちた密告状。悪戯と考えられていたが、ついには殺人事件が引...
人間の矛盾した心理を、鮮明にあぶり出している 「〆」(山白朝子)(「日本文学100年の名作第10巻」) 新潮文庫 旅する「私」と和泉蠟庵の後を追いかけるようについてくる白い鶏。「私」は小豆と名付ける。二人は迷い込んだ村で...
あとには人生の悲哀だけが残されてしまう 「黄昏の回想」(椎名麟三)(「百年文庫027 店」)ポプラ社 若林はふとデパートに立ち寄った際、六十ぐらいの老人がソファに座っているのを目にする。老人は終始売り場の方を眺めながら、...
「十五少年漂流記」に胸を躍らせた大人のあなたに 「「十五少年漂流記」への旅」(椎名誠) 新潮文庫 「十五少年漂流記」を知らない方はいないと思われます。ジュール・ヴェルヌが1888年に発表した冒険ジュヴナイルで、無人島に漂...
カプリ島の女性はそのようなものだ 「カプリ島の婚禮」(ハイゼ/関泰祐訳)(「片意地娘 他三篇」)岩波文庫 カプリ島に向かう舟に乗り込んだ「私」が知り合った絵描きの青年は、島で婚約した娘を母に引き合わせるのだという。島に到...