
本作品を味わえる楽しみは堪えられない
「ビブリア古書堂の事件手帳」(三上延)
メディアワークス文庫
栞子・大輔夫婦の営む
古書店「ビブリア古書堂」。
取引のために
海外へ出かけようとしている
大輔から、置き去りにした
「自分の本」を見つけておくよう
頼まれた栞子。
自宅や倉庫を確認するが、
そのたびに勘の鋭い娘・扉子が
興味を示し…。
「ビブリア古書堂の事件手帳」も
いよいよ第2シリーズへと
読み進めることができました。
第7巻で大輔と栞子が結ばれたことで
筋書きは完結を迎えたのですが、
2018年にこの作品が
映画化されたためでしょう、
こぼれ落ちたエピソードを
拾い上げたような
短編集となっています。
しかしながら、
単なる「番宣」のようなものには
終わっていません。
第2シリーズの
静かな序章ともなっています。
【主要登場人物】
篠川栞子
…ビブリア古書堂店主。
足がやや不自由。
篠川大輔
…ビブリア古書堂店員。旧姓五浦。
栞子の夫。
篠川扉子
…栞子・大輔の娘。6歳。
本だけが友達。
篠川文香
…栞子の妹。
篠川智恵子
…栞子の母。栞子・大輔に
古書売買の知識を指導する。
坂口昌志・坂口しのぶ
…「論理学入門」の一件を機に、
ビブリア古書堂の常連客となる。
平尾由美子
…坂口昌志の姪。
父・和晴は昌志の異母兄。
磯原秀実
…売れっ子イラストレーター。故人。
磯原未喜
…秀実の母親。
磯原きらら
…秀実の妻。コスプレーヤー。
志田
…常連。せどり屋。ホームレス。
姿を消す。
小菅奈緒
…文香の友達。志田を「先生」と慕う。
紺野祐汰
…奈緒とともに志田の行方を捜す少年。
吉原孝二
…かつて栞子を陥れようとした
古書店主・吉原喜市の息子。
本作品の味わいどころ①
再び第1シリーズでの登場人物が
坂口夫婦、志田と奈緒のコンビなど、
第1シリーズでのおなじみの面々が、
新しい人物との関わりとともに
描かれています。
そして栞子を窮地に陥れた
吉原喜市の息子・孝二が、
父親に代わってビブリア古書堂に
リターン・マッチを挑みます。
第1シリーズで描かれなかった
「その後」を味わえる楽しみは
堪えられません。
本作品の味わいどころ②
大輔の語りでは綴れなかった物語が
第1シリーズのエピソードは
すべて大輔が語り手となっています。
大輔では語り得なかった側面を、
絶妙に描き出しています。
大輔の語りは、
第1シリーズにこの上ない
緊迫感をもたらすとともに、
栞子との関係を
絶妙に描き出していました。
それでは描くことのできない
サブストーリーがあったのです。
第1シリーズで
描くことのできなかった裏話を
味わえる楽しみは堪えられません。
本作品の味わいどころ③
最後に二人の娘・扉子の活躍が
4話構成の第3話まで読んだ限りは、
第1シリーズの
「落ち穂拾い」的な印象が拭えません。
ところが第4話で
初めて扉子が事件を解決します。
本作品は「落ち穂拾い」を使った
「番宣」ではありません。
新しいストーリーの幕開けなのです。
第1シリーズを上回るであろう
第2シリーズのプロローグを味わえる
楽しみは堪えられません。
というわけで、本作品を味わえる
楽しみは堪えられないのです。
第1シリーズ第4巻あたりから
筋書きが濃密になった分、
本作品が薄味に感じられるのは
仕方ないかも知れません。
しかしこれからを予感させる
「第8巻」であり、
読む楽しみは堪えられないはずです。
第1シリーズを読んだ方はぜひ
第2シリーズへとお進みください。
※ここまでのシリーズの概要が
ざっくり理解できる動画が
YouTubeにありました。
※既に3月には第2シリーズ第3巻が
発売されています。
はやる気持ちを抑えて、
じっくり読み進めたいと思います。
(2022.6.13)

【ビブリア古書堂の事件手帳】
【ビブリア古書堂 第2シリーズ】
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