「百年文庫032 黒」

清く正しい出版社・ポプラ社らしからぬ一冊

「百年文庫032 黒」ポプラ社

「牧師の黒のベール ホーソーン」
司祭フーパーはある日、
黒いベールで顔を覆って
説教壇に立つ。
村は騒然となり、
非難と噂が飛び交う。
教会の代表者たちや、
彼の妻となるべき女性の
説得にもかかわらず、
司祭はいかなる時も黒いベールを
はずそうとしなかった…。

内容を見る限り本書は、
子どもや青少年向けの
清く正しい出版社・ポプラ社らしからぬ
作品三篇が収められています。
それもそのはず、
テーマは「黒」なのですから。

ホーソーンの作品は、「黒」のもつ
神秘性に焦点を当てています。
「黒」という色は
「恐怖」というイメージが
先に立つのですが、
フーパー司祭の黒いベールは、
彼の語る言葉に力を与えています。

「けむりを吐かぬ煙突 夢野久作」
「私」は原稿を書き上げ次第、
雑誌社に送るつもりである。
そしてその後に
姿をくらます算段をする。
その原稿には、
事件の真相を
書いておいたからである。
「私」が南堂伯爵夫人を
殺害した一件の真相を、
簡単には気づかれないように…。

夢野久作サドの作品は、
「悪」としての「黒」を主題としています。
「けむりをはかぬ煙突」は、
二人の登場人物が
「黒」さ加減を競い合っているような、
異様な雰囲気のまま物語が進行します。
「ファクスランジュ」は、
純真な「白」であったファクスランジュと
盗賊団頭目・フランロの「黒」の対比が
特徴的です。

「ファクスランジュ サド」
パリの富豪の娘・
ファクスランジュ嬢には
ゴエという恋人がいた。
しかし彼女の両親は
娘の幸せを願い、
アメリカに巨額の財産を持つ
フランロとの結婚を勧め、
彼女もそれを承諾する。
結婚後、彼女がフランロに
連れて行かれた先は…。

さらに共通するのは、主人公が次第に
「黒」くなっていくことです。
フーパー司祭は歳を重ねるごとに
「黒」の神秘性を
強く纏っていくことになります。
「けむり」の「私」は、
自分より数段上手の悪人女性と出会い、
さらに「黒」さに磨きがかかります。
ファクスランジュ嬢は
「白」から「黒」へと転落せざるを得ない
運命に翻弄されます。

今日紹介した本

作者たちも「黒」いです。
ホーソーンは
父親がセイラム魔女裁判の
判事を務めた影響からか、
「悪」や「罪」を扱った作品の
多い作家です。
夢野は
「瓶詰地獄」や「ドグラ・マグラ」など
グロテスクな作風が売り物。
サドにいたっては
何をか言わんやの感があります。
さらには訳者・澁澤龍彦。
「悪徳の栄え事件」で
有罪判決を受けています。

「黒」なら「黒」で、
徹底して「黒」い「百年文庫032 黒」。
さすがポプラ社です。

(2022.6.29)

Nika AkinによるPixabayからの画像

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