「つながる読書術」(日垣隆)

一歩進んだ読書をしようと考えているあなたに

「つながる読書術」(日垣隆)
 講談社現代新書

本や読書に関わる新書本に、
ついつい手を出してしまいます。
「ある程度読書をしているのだから
必要ないのではないか」と
思いながらも、
「何か新しい発見があるに
ちがいない」という思いの方が
先に立ってしまうのです。
本書もそうして手にした一冊です。

【本書の章立て一覧】
第一章 仕込みとしての読書術
 選別力と読解力の基礎トレをする
第二章 知的体力を鍛える読書術
 おもしろい読書で、
  激しく脳を活動させる
第三章 書いて深める読書術
 読書で得た知識を
  「自分のネタ」に変換する
第四章 話してつながる読書術
 読書を介した
  ネットワーキングを構築する
第五章 電子書籍時代の読書術
 電子書籍と紙媒体の共存共栄は当然
付録 読まずに死ねない
    厳選一〇〇冊の本!

「読書」について書かれた本の多くは、
あまり読書をしていない方への
読書指南のようなものが
多いかと思います。
本書はそうした「読書本」とは
やや異なり、読書初心者向けの部分は
第一章第二章だけです。

第一章では、
読書をしてない人が
読書を始めるための方法、
そして読書を継続させるための
ノウハウが紹介されています。
そして第二章では、
読書の「面白さ」の分析が
試みられています。
「名著の注釈を見逃すな」
「名著の舞台を訪問せよ」等、
読書をさらに楽しいものにするための
新しい視点が盛り込まれています。

第三章以降は
上級者編というべきでしょうか。
第三章では読書における
「書く」ことの重要性について
述べられています。
「書くことが考えることを
深化させる」というのは
まさにその通りだと思います。
第四章はいわゆる「読書会のススメ」。
地方では難しい部分がありますが、
参考にできる点が多々あります。
第五章では、
これから到来するであろう
(すでに到来している)電子書籍時代を
予想しています。
電子書籍は紙媒体と共存共栄するという
筆者の展望が書かれています。

本書の概略について紹介しましたが、
本書の良さは、読み手の立場に立って
書かれてあるということでしょう。
理解しやすいのです。
その理由は、
筆者の論旨がそれぞれの節の小見出しに
端的に表現されているからです。
例えば第一章については
以下のようになっています。
 「読書」には七種類ある
 読書はパワーアップする
 読書とは、「おのれを知る」営為!
 いつか読む本でなく、
  すぐ読む本を買う
 まず「ベーシックな
  読み方」を身につける
 「頭に入る読み方」を身につける
 つまらない本は的確に「損切り」する

そしてそれぞれの節には
「Point!」として、いわゆる
「まとめ」が提示されていることも
読み手の理解に役立っています。
「読書もマラソンも、
走り続ければ「快感」になる。」
「書くことで思考が深まり、
アウトプットも上質になる。」
など、
シンプルで明快です。

ただし、分野が多岐にわたり、
初心者からベテランまでを
対象としている分、
読み手にとって内容のすべてが
役立つわけではない
(一部しか役立たない)ことが
難点でしょうか。
また、内容の一部は
「新書本」「専門書」「ビジネス書」を
対象としていると考えられ、
「小説」「文学」に対して
書かれている部分が多くないことも
好き嫌いが分かれそうです。

しかし、
自らの読書を進化させるための視点が
豊富に盛り込まれていることは
間違いありません。
一歩進んだ読書をしようと
考えているあなたに
お薦めしたい一冊です。

(2022.7.5)

Godsgirl_madiによるPixabayからの画像

【日垣隆の本はいかがですか】

【関連記事:読書論関係の本】

【読書に関わる本はいかがですか】

【書斎を涼しくしませんか】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA