本書はまるで、「知への冒険準備」
「学び続ける力」(池上彰)
講談社現代新書
学ぶ楽しさを知ること。
それが現代の
教養なのではないでしょうか。
では、そのためには、
何をどう学んだらいいのか。
そんなヒントになればと思って、
この本を書きました。
この本のテーマは、
「現代版教養のすすめ」なのです。
…。
我が家の子どもたちが小さかった頃、
毎週土曜日、欠かさずみていたのが
NHK「週刊こどもニュース」でした。
その「お父さん」役の池上彰氏。
わかりやすい解説が素敵でした。
政治や経済のわかりにくい記事を、
かみ砕き、平易な言葉に置き換え、
具体的な事例をいくつもあげ、
小中学生でも理解できるように、
そして大人であれば
より深く理解できるように、
解説していた姿が心に残っています。
その「わかりやすさ」の秘密は
ここにあったのかと、
本書を読んで納得できました。
鍵は「教養」です。
本書は現代人が持つべき
「教養」について書かれた本なのです。
【本書の章立て一覧】
第1章 学ぶことは楽しい
第2章 大学で教えることになった
第3章 身につけたい力
第4章 読書の楽しさ
第5章 学ぶことは生きること
堅苦しい内容ではありません。
筆者が東工大リベラルアーツセンターの
教授職として
教壇に立った経験をもとに、
「学びとは何か」
「どうすれば伝わるのか」
「考えるとはどのようなことなのか」
「真の教養と何か」を中心に、
筆者の思索が
ほとんどエッセイのような形で
綴られているのです。
それはまるで「知への冒険準備」とでも
いうべきものであり、
学びへの意欲がかき立てられます。
五十も半ばを過ぎた
私でさえそうなのですから、
若い方々が本書に接すれば、
より一層、
知への好奇心が高まるはずです。
私が注目した点の一つは、
「はじめに」で述べられ、
本文中の至る所に現れる
「すぐに役立つことは、
すぐ役に立たなくなる」の一文です。
ともすれば「役に立つ知識」だけが
偏重される現代です。
「大学で学問を修めるよりも
専門学校ですぐ仕事に役立つ技能を
習得する方がよい」という考え方が、
昨今の高校生に広がっています。
その考え方は決して
間違いではないのですが、
何か違うのではないかと
疑問を感じていました。
その疑問に一つの形ある解答を
得たような思いがします。
注目したもう一つは、
「理系の専門知識だけでも、
文系の経済知識だけでも
解は出てこない。
既存の枠組みを一歩も二歩も
踏み出さなければ
対応できない。」という考え方です。
教育の現場は、昔から
「文系」「理系」というくくりを
使いたがるのですが、
現代の「解のない問題」に対しては、
「文系」「理系」の枠を超え、
常識に縛られない発想が必要であり、
そのためには幅広い知識を統合できる
「教養」こそが解決手段となり得る
ということなのでしょう。
学校現場に身を置くものとして
刮目させられる思いです。
さて、
本書は2013年に刊行された本ですが、
発売同時に購入、初読し、
今回は再読となります。
前回の読了時、本書に刺激され、
放送大学を受講し、
司書教諭の資格を取りました。
今回再読し、再び受けた刺激を、
何に持って行こうか、
わくわくした気持ちでいるところです。
〔追記〕
池上彰氏の本が好きで、
これまで以下の四冊を読んでいます。
こちらも素敵です。
(2022.7.12)
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