自分を「つくる」「鍛える」「広げる」ための読書
「読書力」(齋藤孝)岩波新書
「娯楽のための読書」ではなく、
「多少とも精神の緊張を伴う
読書」がテーマだ。
ちょっときついけれども楽しい。
この感覚を読書で子どもたちに
味わってもらいたい。
この感覚があれば、
どの本を読むのかは
やがて自分で決めていける…。
「まえがき」の一文を抜粋しました。
「読書力」という表題通り、
「読書を押し進めていくための
力や技能の養い方」について書かれた、
齋藤孝氏による一冊です。
本書の刊行は2002年であり、
すでに出版から
20年が経過しましたが、
本書の価値は現在の方が
より高まっていると考えられます。
〔本書の章立て一覧〕
序 読書力とは何か
Ⅰ 自分をつくる
─自己形成としての読書─
Ⅱ 自分を鍛える
─読書はスポーツだ─
Ⅲ 自分を広げる
─読書はコミュニケーション力の
基礎だ─
文庫百選
「読書力」おすすめブックリスト
※詳しくはこちらから(岩波書店HP)
本書は、一つの章が
さらにいくつかの小章から成り立ち、
「序」で22章、「Ⅰ」は18章、
「Ⅱ」は11章、「Ⅲ」は13章と、
細分化されています。
そのため一つの小章は、
わずか2~5ページ程度であり、
普段読み慣れていない方
(おそらく中学生であっても)
十分に読み進められるような
つくりになっています。
場合によっては気になったところを
「つまみ食い」することも可能です。
読書を推奨するような
「読書入門」的書籍の多くが、
じつは読書初心者が読むには
ハードルの高い構造になっていることが
多いのですが、
本書はそのようなことがありません。
安心して読むことができます。
それが本書の特徴の一つでしょう。
その小章の一つ一つは、
著者・齋藤孝氏が
熱弁を振るうかのように、
読書の有効性・有用性・必要性を、
これでもかとときには熱く、
ときには優しく、またときには強く、
たたみかけるように
訴えかけてくるのです。
そしてそのどれもが正論であり、
また根拠が明瞭であり、
説得力に富んでいます。
これが本書の特徴のもう一つです。
これでなおかつ
「読書は不要」と考えるのであれば、
その人は本とは無縁の世界を生きる、
悲しい人ということになるでしょう。
とはいえ、本書の中で氏が自身を
振り返る部分で提示している書物には、
高史明「生きることの意味」、
フランクル「夜と霧」、
九鬼周造「「いき」の構造」など、
かなり読書レベルの高いものが
いくつも登場します。
この点は初心者が
戸惑うところかも知れません
(本書は「入門者向け」の部分と
「中・上級者向け」の部分が
混在しています。
それを読み分ける力があれば
気にならないのでしょうが)。
「読書」は、本書が指摘するとおり、
「自分をつくる」ためのものであり、
「自分を鍛える」ためのものであり、
「自分を広げる」ためのものに
ほかなりません。
本書を読んで、「読書」の愉しさに、
もう一度接近してみませんか。
〔追記〕
本書を2005年頃購入し、
初読しました。
何度目かの再読になります。
かつて、受け持った中学生に対して
読書指導をしようとして、
ではどのように読書を勧めていくべきか
困惑した時期がありました。
そのときに出会ったのが本書でした。
「読書とは何か」ということについて、
これほど明確に書かれたものは
ないと思います。
私の読書経験や読書観に
大きな影響を与え、
そしてこのサイトを立ち上げた(最初は
Yahoo!ブログからスタートした)
きっかけともなった一冊です。
(2022.7.19)
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