最も大切なのは「主体性がポイント」
「定年準備」(楠木新)中公新書
誰もが一回限りの
自分の人生を生きている。
それを大切にしたいのは
当たり前のことだ。
昔であれば、
両親や先輩の言うことを聞き、
従来と同じことをしていれば
乗り切れたが、
今はそうはいかない。
寿命が延びて
未経験の事柄に…。
私も五十の半ばを過ぎ、
「定年」が見えてきました(もっとも
64歳まで延長されたのですが)。
楠木新の「定年後」は、
まさに「定年後」の身の振り方の
ヒントに富んだ内容で、
参考になりました。
そして本書「定年準備」。
私の年代にとって、
今まさに考えるべきこと・
行動すべきことが書かれてありました。
【本書の章立て一覧】
はじめに
第1章 人生は二度ある?
第2章 「もう一人の自分」を発見
第3章 60歳からのハローワーク
第4章 最後に戻るのは地域と家族
第5章 童心に返る
第6章 魅力的な先達に学ぶ
第7章 逆境がチャンスに
エピローグ
定年準備のための行動六か条
あとがき
参考文献
本書の特徴は、
定年準備として必要なことを
筆者があれこれ
書き上げていないということです。
読めば簡単に知識が得られるような
ハウツー本ではないのです。
ここにあるのは、
「いかにして定年を乗り越えて
第二の人生に踏み込んだか」という、
数多くの実践例です。
私にとっては
大きな勉強になったのですが、
読み手によっては
全く得るものがなかったという
結果になるかもしれません。
それは次のようなことが
考えられるからです。
一つは、受け身の姿勢で
本書に接した方にとっては、
書かれてあることは
「特殊な状況下での成功例」や
「偶然の機会が生かされた幸運」としか
捉えられない(であろう)からです。
そうした方々は、
「平凡な会社員として歩んできた
自分には参考にならない」といって
本書を投げ出してしまうかも
知れません。
もう一つは、すぐ役立つ知識を
得ようとしている方々にとっては、
本書の内容はかなり希薄に感じられる
可能性があるという点です。
本書の「実践例」は筆者の論旨に沿って
配列されているものの、
その論旨は
いささかの押しつけもないため、
単なるエッセイの羅列に過ぎないと
捉える方もいて当然だと思います。
しかしながら、
本書に対するそうした接し方は、
そもそも「定年」を迎えるにあたって
不適切であると言わざるを得ません。
本書に書かれてあることの中で
最も大切なのは「主体性がポイント」と
いうことなのです。
「会社という共同体から
離れたときには、
自分なりにはたらく意味や
生活する意味を
見いだすことが求められる。
ところが主体性を持たない状態では、
人生や生活に
意味を見出すことはできない」。
したがって「実践例」から
私たち読み手が学ぶべきは、
具体的な手段や方法ではなく、
定年に対する姿勢や考え方、
そしてそれ以上に
「自分の生き方を自分で決める」という
思考プロセスそのものなのです。
そういう意味では、
本書は何も50代だけではなく、
年齢を問わず、
自らの生き方をよりよいものにしたいと
願う方に対しては、
多くのヒントを提供してくれる
一冊となるはずです。
私も、自分の立ち位置を
もう一度見つめ直し、「定年準備」、
いや、「よりよい生き方の準備・実践」に
取り組んでいきたいと考えています。
〔楠木新の本について〕
本書と同じように、前作「定年後」も、
生き方の大きな参考になります。
内容的には本書と「定年後」、
どちらから読んでも大丈夫です。
実はすでに第3弾となる
「定年後のお金」も、
2020年に出版されています。
私も近いうちに
読みたいと思っています。
加えて第4弾の「転身力」が、
今年6月に刊行されていました。
こちらも読んでみたいと思います。
さらに「定年」シリーズに関連して、
このような本も出版されています。
「まんがでわかる 定年後 黄金の7法則」
(楠木新監修)。
〔定年後を考える新書本〕
定年後を考える本が
多数出版されています。
それだけ現在、定年後の生き方が
難しくなってきているのでしょう。
出口治明の「還暦からの底力」も、
そうした視点で編まれた一冊です。
こちらも参考になりました。
そのほか、新書本だけでも
たくさん登場しています。
私が注目しているのは以下の本です。
大切なのは、
「定年」ではなく「生き方」だと思います。
その視点で読んでみたいと思います。
(2022.9.6)
【今日のさらにお薦め3作品】
【こんな新書本はいかがですか】