見る度に宇宙への思いが膨らむ、そんな一冊
「カラー版 続ハッブル望遠鏡が見た宇宙」
(野本陽代)岩波新書
ため息をつきたくなるほど美しい
ヘリテッジ・シリーズの写真。
遠くの宇宙でくりひろげられる
銀河の衝突。
新しい星が生まれてくる
星のゆりかご。
死にゆく星が最後に見せる
妖しいまでの姿。
写真の一枚一枚が
感動ものである。…。
「はじめに」に記されている、
著者・野本陽代氏の
この一文がすべてでしょう。
頁をめくっているだけで
愉しくなる一冊です。
次から次へと美しい天体写真が
目に飛び込んできます。
何度見ても見飽きない、
見る度に宇宙への思いが膨らむ、
そんな一冊です。
【本書の章立て一覧】
1 ハッブル・ヘリテッジ
2 太陽系の仲間たち
3 ハッブルの10年
4 星たちの世界
5 銀河宇宙
本書が出版されたのは2000年ですので、
すでに20年以上が
経過したことになります(現在絶版中)。
それでもここに収められている
数々の写真は、
宇宙の神秘を雄弁に語りかけてきます。
こうした鮮明な画像を
鑑賞するのであれば、
本書のような新書本ではなく
大型本を探すべきなのでしょう。
しかし、大型本は置き場所に困る上、
意外と書棚から取り出すのが
おっくうになり、
読む回数が激減する傾向にあります。
いつでも手軽に読むことのできる、
この新書本というのが素敵なのです。
「ハッブル・ヘリテッジ」とは、
「これまでにハッブルが撮影した
数多くの画像のなかから、
人類の共有財産(ヘリテッジ)として
残すにふさわしいすばらしいものを
厳選」したものなのです。
12-13頁に収録されている
2つの銀河の衝突などは、
目を見張るほどの
美しさであると同時に、
想像を遙かに超える
時空間の物語を感じさせます。
(写真はすべてパブリック・ドメイン)
宇宙とは、「光のない闇の世界」であり、
「暗い」というイメージがありますが、
これらの写真を見る限り、
宇宙は光と色彩に満ちた世界で
あることがわかります。
「見る」ことが主体となる本書ですが、
読みどころとしては
「3 ハッブルの10年」です。
今でこそ多大な成果を上げた
ハッブル望遠鏡ですが、
そのスタートは苦難続きであったことが
述べられています。
想定外のトラブルにより、
最初期の写真はピンボケ。
しかし起死回生の修復が功を奏し、
現在の高解像度を
得るようになったのです。
ネット上にもその前後の写真の
精度の比較がありました。
ただし、タイトルに「続」とあるように、
本書は「ハッブル望遠鏡が見た宇宙」の
続編にあたります。
構成自体は「正」とほぼ同一なのです
(文章そのものはもちろんことなるが)。
したがって、本書は
やはりその美しい掲載写真を
とことん堪能するのが
正しい読み方といえるでしょう。
宇宙が好きなあなたに、
お薦めします。
〔野本陽代の本〕
1997年刊行の「正」、
2000年刊行の本書「続」に続き、
岩波新書からは
「ハッブル望遠鏡の宇宙遺産」(2004年)、
そして岩波ジュニア新書からは
「宇宙はきらめく」(2007年)が
出版されています。
「ハッブル望遠鏡の宇宙遺産」も
近いうちに取り上げたいと思います。
なお、岩波新書からは
「宇宙の果てにせまる」(1998)、
「太陽系大紀行」(2010)も
出版されています。
こちらは写真がメインではありません。
写真がメインのものとしては
講談社+α新書
「ここまで見えた宇宙の神秘」(2001)、
講談社現代新書
「ハッブル望遠鏡 宇宙の謎に挑む」
(2009)があります。
以上は新書本ですが、
単行本では以下が面白そうです。
「巨大望遠鏡時代
―すばるとそのライバルたち」(2001)
「はるかな宇宙 身近な宇宙」(2006)
残念ながら多くは絶版となっています。
この手の本は
流通期間が短いことが多く、
古書を探す必要があります。
(2022.9.27)
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