「地球持続学のすすめ」(武内和彦)

SDGsという言葉が人口に膾炙した今こそぜひ

「地球持続学のすすめ」(武内和彦)
 岩波ジュニア新書

岩波ジュニア新書「地球持続学のすすめ」

地球持続学は、
これからの時代を生きる
きみたちにとっては、
自分たちの世代の生存に関わる
大問題である。言い換えると、
地球持続性が二一世紀に
実現できるかどうかの鍵は、
きみたちの世代の生き方に
かかっていると言っても…。

今、世の中では
「SDGs」が叫ばれています。
SDGs―持続可能な開発目標―の
考え方をいち早く(2007年刊行)
紹介した本が、岩波ジュニア新書
一冊である本書です。
現在の社会の在り方の問題点を提示し、
その解決の道筋となる
「地球持続学」の考え方を、
中高生にわかりやすく
解説してあります。

【本書の章立て一覧】
はじめに
1 経済成長の陰で日本の環境は
2 日本から世界に視野を広げる
3 持続可能性の考え方
4 地球温暖化が教える問題の深刻さ
5 東アジアで循環型社会を考える
6 地球持続学を学ぼう
付録 地球持続学が学べる大学リスト
※くわしくはこちらから(岩波書店HP)

21世紀に入り、
環境保全に対する意識が高まり、
リサイクルも盛んとなりました。
そして今、
SDGsがことあるごとに取り上げられ、
本書に書かれてあることのいくつかは、
子どもたちでもすでに
見聞きしていることだと思います。
ここでは私自身が本書を読んで
理解が深まった注目点について
取り上げたいと思います。

SDGsにつながる本書の注目点①
持続可能性は
自然の潜在的能力を生かすこと

「持続」させるためには使用を控える、
といった考え方が一部にありますが、
「持続可能性」とは本来、
自然の持つ潜在的能力を
生かすことであると、
第3章で筆者は説明しています。
水産資源は
適正な漁獲を続けた場合にこそ、
資源を利用し続けられるのであり、
それは森林資源などにも
当てはまるのだそうです。
特に農業分野で
そうした取り組みを怠ると、
すぐにも砂漠化が進行するため、
地球規模での監視や管理が
必要であることを述べています。

SDGsにつながる本書の注目点②
あるべき未来から現在を考える

第4章で著者は、
あるべき未来社会を構想し、
そこに到達していく
道筋(フォアキャスト)を示すことの
大切さを説いています。
「現在の延長線上で将来を予測しても、
破滅的な未来しか浮かんでこない」
(バックキャスト)からだといいます。
まさにその通りであって、
その考え方は持続可能な社会の
構築のみならず、
私たちの将来設計にも
そのまま当てはまることでしょう。
ゴールから考えることの大切さが
示されています。

SDGsにつながる本書の注目点③
「持続可能な開発」は
まだ緒に就いたばかり

これだけSDGsという言葉が
社会に浸透している今、
全世界で取り組みが進んでいるような
印象を受けますが、
決してそうではなさそうです。
それが世界各国に受け入れられたのには
理由があるのでした。
「持続可能な開発」という言葉が、
先進国では
従来の開発の在り方を否定し、
持続可能な方法への模索を
提起したのに対し、
開発途上国にとっては、
開発の必要性が認められ、
開発の在り方を変更すればいいという、
それぞれにとって都合の良い解釈が
可能だった点について言及しています。
まだまだSDGsは、
建前だけのものにしか
なっていないのかも知れません
(身のまわりを見ても
そのように感じることが多々あります)。

だからこそ、
筆者が終末で述べているように、
地球持続性は若い世代に
かかっているといえるのです。
旧来の開発の在り方に慣れてしまった
大人世代が中心の社会では、
SDGsは単なるポーズやかけ声で
終わる危険性があります。
若い世代が自らの問題として捉え、
積極的に
行動しなくてはならないのです。
2007年発行の本書は、
やや鮮度が落ちているとはいえ、
むしろSDGsという言葉が
人口に膾炙した今こそ、
中学生高校生にぜひ読んで欲しいと思う
一冊なのです。

(2022.11.29)

Bela GeletnekyによるPixabayからの画像

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