「迷路荘の惨劇」「三つ首塔」「白と黒」(横溝正史)

嬉しくもあり残念でもある「限定」復刻カバー

「迷路荘の惨劇」「三つ首塔」「白と黒」
(横溝正史)角川文庫

「迷路荘の惨劇」「三つ首塔」「白と黒」

私はとうとう
三つ首塔までたどりついた。
私たちは
この塔へたどりつくまで、
いったい幾日かかったのか。
そして、そのあいだに
幾人の血がながされたのか。
思えば私たちは
血の海をおよいで、
ここまでたどりついたような
ものなのだ…。
(「三つ首塔」冒頭)

先日、久しぶりに
リアル書店へ出かけて驚き!
なんと横溝正史の角川文庫
「三つ首塔」「迷路荘の惨劇」「白と黒」が、
杉本一文の表紙で復刊されている!
三作品ともすでに昭和時代のものを
所有していて、さらに
「迷路荘」と「白と黒」は
10年前に同じように限定復刊された
ものを所有しているのですが、
欲しくて欲しくてたまらず、
この三冊を抱え、
レジへ直行してしまいました。

嬉しい復刊ではあるのですが、
同時に疑問も渦巻くのが
「限定復刻カバー」のコピーです。
なぜ?
限定にする必要は何?
すでに一昨年末から杉本一文の表紙で
計28冊が復刊したはずです。
平成8年段階で新角川文庫として
出版された20数冊は
なぜ未だに漢字一文字デザイン?
もしこれらも昨年度の段階で
杉本一文表紙に切り替えていたら、
横溝正史没後120年を盛大に記念する、
出版社としては後世に誇ることのできる
一大事業になっていたはずです。
この期に及んでまだ限定?
杉本表紙にできない
理由があるのでしょうか?

ネットで確認すると、
今回はこの3冊に加え、
「犬神家の一族」が限定復刻。
そして「金田一耕助の山高帽」と
「金田一耕助のバゲージタグ」が
記念発売されるのだとか。
横溝正史ファンが
いったい何を求めているのか、
出版社はまったく
把握できていないようです。残念!

というわけで、
横溝正史の文庫本に対する要望を
書き上げてみたいと思います。

〔横溝正史の文庫本に対する要望〕

⑴まだ復刊されていない作品を
 即復刊して欲しい
 (もちろん杉本表紙で)

・ノンシリーズ中長篇
 「呪いの塔」
 「女が見ていた」
 「塙侯爵一家」
・由利・三津木作品を収録したもの
 「仮面劇場」
 「夜光虫」
 「悪魔の設計図」
 「幻の女」
 「双仮面」
 「悪魔の家」
 「青い外套を着た女」
 「空蝉処女」
・ノンシリーズ短篇集
 「恐ろしき四月馬鹿」
 「山名耕作の不思議な生活」
 「刺青された男」
 「ペルシャ猫を抱く女」
 「誘蛾燈」
 「芙蓉屋敷の秘密」
 「殺人暦」
・ジュヴナイル
 「白蠟仮面」
 「姿なき怪人」
 「風船魔人黄金魔人」
 「怪盗X・Y・Z」
  (第4話付きの完全版として)
・人形佐七捕物帳
 「羽子板娘」
 「神隠しにあった女」
 「船幽霊」
・その他
 「シナリオ悪霊島」
 「真説金田一耕助」
 「金田一耕助のモノローグ」

⑵昨年復刊された「死仮面」
 中島河太郎補筆版ではなく
 完全版として出版して欲しい

⑶すべての文庫本の表紙の杉本一文化
 (期間限定ではなく)を
 実現して欲しい

・特に「首」「人面瘡」の限定解除
・「悪魔の寵児」「悪霊島」の新イラスト
 (トリミング版)のフルサイズ化
・「喘ぎ泣く死美人」「双生児は囁く」
 杉本表紙化

⑷平成8年段階で行われた
 語句や表現の改悪を廃止し、
 原典に戻して欲しい

⑸平成8年段階の復刊で削除された
 解説を戻して欲しい

⑹昨年復刊された「面博士」を
 「面博士」に改定して欲しい

なお、「限定復刻カバー」を出すなら、
「本陣殺人事件」
「黒猫亭事件」ヴァージョンや、
「夜光虫」の2回目の版といった、
あまり流通しなかった版や、
いくつかのヴァージョン違いのある
作品について実施するなら、
それは意味や価値のあることだと
考えます。

本当は、杉本一文表紙で、
文庫未収録の作品を
次から次へと発刊し、文庫全集を
目指して欲しかったのですが、
「喘ぎ泣く死美人」「双生児は囁く」で
終わってしまいました。
その一方で、
柏書房、出版芸術社、
春陽堂書店、論創社から
数多くのハードカバー本が
出版されています。
これらの作品の中から
一つでも二つでも、
杉本一文表紙で文庫化が進むことを
期待したいと思っています。

本は、テキストだけではありません。
表紙も含めて「本」なのです。
そして横溝正史の文庫本と
杉本一文の表紙画は
切っても切り離せない
関係にあるのです。
「山高帽」などつくる前に、
やるべきこと、できることは
たくさんあるはずです。
ぜひさらに一歩を踏み出して
いただきたいと思います。

(2023.3.3)

〔今回限定カバーで復刻した3冊〕

〔横溝正史ミステリはいかが〕

〔復刊!横溝正史〕

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Peter HによるPixabayからの画像

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