ホームズも、シリーズ自体も、まさに「生還」
「空き家の冒険」(ドイル/日暮雅通訳)
(「シャーロック・ホームズの生還」)
光文社文庫

アデア卿が変死体で見つかった
殺人事件は、
ロンドン中を騒がせていた。
頭を銃で
撃ち抜かれていたのだが、
鍵のかかっていた室内からは
拳銃は発見されず、
窓からの侵入の
形跡もなかったのだ。
謎が解けないワトスンを訪ねた
老人は…。
ドイルによる
シャーロック・ホームズシリーズ
第25作の本作品は、
本書「シャーロック・ホームズの生還」の
第一作であり、
死んだと思われていたホームズが、
実は生きていたというストーリーです。
「ストランド・マガジン」
1893年12月号の「最後の事件」から
数えて10年、1903年10月号に
掲載された本作品により、
作中のホームズも、
そしてホームズ・シリーズ自体も、
まさに「生還」となったのです。
【主要登場人物】
「わたし」(ジョン・H・ワトスン)
…語り手。医師(元軍医)。
ホームズを失い、傷心の日々を送る。
ロナルド・アデア卿の殺人事件に
関心を持っている。
シャーロック・ホームズ
…探偵コンサルタント。
3年前、モリアーティ教授とともに
滝壺に転落、行方不明となっている。
ロナルド・アデア卿
…上流貴族の青年。
不可解な死を遂げる。カード好き。
モラン大佐
…アデア卿と組んで
カード・ゲームをしていた男。
ハドスン夫人
…ホームズの下宿の管理人。
パーカー
…ホームズを狙う暗殺者の一人。
首絞め強盗。
レストレード
…スコットランド・ヤードの警部。
マイクロフト・ホームズ
…シャーロックの実兄。
モリアーティ教授
…「最後の事件」でホームズとともに
滝壺に落下した犯罪者
(本作品には直接登場しない)。
本作品には、
実は3つの事件が描かれていて、
それぞれが
味わいどころとなっているのです。
本作品の味わいどころ①
「ホームズ殺人事件」の真相
「最後の事件」で死んだはずのホームズが
再登場となるのですから、
そこに何らかの
決着をつけなければなりません。
ホームズがいかにして
絶体絶命の危機から脱出できたのか、
そしてモリアーティの残党の追撃から
いかにして逃れ続けたのか、
さらには一味を一掃して
大逆転するための下準備を
どのようにして行っていたか、
それが本作品の
一つめの味わいどころとなっています。
本作品の味わいどころ②
「ホームズ暗殺事件」の顛末
実はホームズを亡き者にしようとする
一味はまだ残っていて、
その暗殺者との戦いこそが
本作品の肝となっています。
その中身はいわゆる「囮作戦」であり、
いささか稚拙ではあるものの、
エンターテインメントとしては
むしろこのほうが面白さが上でしょう。
ホームズvs暗殺者との戦い、
それが本作品の二つめの
味わいどころとなっているのです。
本作品の味わいどころ③
「アデア卿殺害事件」の解明
冒頭でワトスンが頭を悩ませていたのが
「アデア卿殺害事件」なのです。
鍵のかかった室内で殺害された謎。
室内に拳銃も残されていない、
侵入者の形跡もない、
半ば密室状態での殺人。
被害者アデア卿には
恨みをいだくような人間はいない。
全く手がかりなしの難事件なのですが、
3年ぶりにロンドンに戻った
ホームズは、それを見事に解決します。
それも自身の暗殺計画の阻止と
抱き合わせの、
まさに一石二鳥の成果を上げるのです。
謎の事件に対する
ホームズの見事な推理、
それが本作品の
三つめの味わいどころなのです。
120年前のロンドン市民は、
10年ぶりのホームズ帰還に、
さぞかし驚喜したでしょう。
ドイルはこの作品以後、
ホームズシリーズを再開させ、
最終的に60作品を
書き上げていくのです。
〔収録作品一覧〕
空き家の冒険
ノーウッドの建築業者
踊る人形
美しき自転車乗り
プライアリ・スクール
ブラック・ピーター
恐喝王ミルヴァートン
六つのナポレオン像
三人の学生
金縁の鼻眼鏡
スリー・クォーターの失踪
アビィ屋敷
第二のしみ
〔光文社文庫:ホームズ・シリーズ〕
「緋色の研究」
「四つの署名」
「シャーロック・ホームズの冒険」
「シャーロック・ホームズの回想」
「バスカヴィル家の犬」
「シャーロック・ホームズの生還」
「恐怖の谷」
「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」
「シャーロック・ホームズの事件簿」
(2023.5.12)

【関連記事:ホームズ作品】
【海外ミステリはいかがですか】
【今日のさらにお薦め3作品】
【こんな本はいかがですか】














