「巫女の死」(デュレンマット)
霊体たちの真実と嘘に満ちた「供述」 「巫女の死」(デュレンマット/増本浩子訳)(「失脚/巫女の死」) 光文社古典新訳文庫 老いによる死を自覚し、その時を迎えようとしていた巫女・パニュキス。彼女の目の前に、次々と霊体が姿を...
霊体たちの真実と嘘に満ちた「供述」 「巫女の死」(デュレンマット/増本浩子訳)(「失脚/巫女の死」) 光文社古典新訳文庫 老いによる死を自覚し、その時を迎えようとしていた巫女・パニュキス。彼女の目の前に、次々と霊体が姿を...
昔語りと「わたし」の現実が、幻想的に重なり合う 「みかげ石」(シュティフター/藤村宏訳)(「百年文庫043 家」)ポプラ社 ある春のことだった。ひどい病気が突然、わしらのところにもやって来たのだ。そしてこのあたり一帯にす...
幸せな家庭の、幸せな「ぼく」の姿を 「キャベツ」(石井睦美)講談社文庫 すべての始まりはキャベツだ。そんなふうに言い出すと、このフレーズはなんかこう深遠な哲学的命題のように聞こえる。でもそうじゃないんだ。それは正真正銘の...
名探偵と対等に渡り合う切れ者警部登場 「ウィステリア荘」(ドイル/日暮雅通訳)(「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」) 光文社文庫 「グロテスクな体験」をしたという人物・エクルズがホームズに調査を依頼する。親しくなった友...
現代の私たちが読むと噴飯もの、でも… 「押川春浪幽霊小説集」(押川春浪) 国書刊行会 オオ、真の幽霊!真の幽霊なるものありやなしや、恐らくはなかるべし。果たしてなきかと問われれば、余は「然り」と断言することが出来ぬのであ...
その考えや生き方を大きく転換させている 「百年文庫037 駅」ポプラ社 「駅長ファルメライアー ロート」列車事故の現場に駆けつけた駅長・ファルメライアーは、担架に寝かされた女性に心を奪われる。回復した女...
遠藤周作の文学的原点ともいえる二作品 「白い人」「黄色い人」(遠藤周作)(「白い人・黄色い人」)新潮文庫 母親から禁欲的な生活を強いられてきた「私」は、十二歳の頃、女中が老犬を虐待する光景に魅せられる。ナチによる占領下の...
「分かりやすさ」と「分からなさ」が同居した 「変化する陳述」(石浜金作)(「新青年傑作選集1」)角川文庫 だってもうそのほかに手段がなかったのですもの……。それでわたしくはあの人をいっしょに……、…………、…………。……...
家船の若い男女の、実らぬ恋の悲しい物語 「黑髮」(鈴木三重吉)(「千鳥 他四篇」)岩波文庫 私が戀をした女はおふさと言つた。おふさが船は酒、煮肴、壽司などを賣つてゐた。大きな浦へ着けた時には、おふさが船は石崖の上に蓆の小...
きれい事で塗り固めるのではなく 「象を射つ」(オーウェル/高畠文夫訳)(「百年文庫047 群」)ポプラ社 しかし、そのとき、わたしは振り向いて、わたしのあとからついて来た群衆を眺めた。それは二千人を下らない大群衆で、しか...