「最終戦争」(今日泊亜蘭)

そうした現実との符合が連続する中で

「最終戦争」(今日泊亜蘭)
(「最終戦争/空族館」)ちくま文庫

「最終戦争/空族館」ちくま文庫

「最終戦争」(今日泊亜蘭)
(「あしたは戦争」)ちくま文庫

「あしたは戦争」ちくま文庫

米軍機動力の象徴、
サンジャック沖に遊弋している
核熱空母エンタプライズⅣ号に
なにか異変が
あったらしいことは、
宇良木にも、
記者クラブといわず、
宿舎にいるときから
もう分かっていた。
現地人の給仕までが
そわそわしたり…。

1965年に発表された
今日泊亜蘭のSF短篇作品です。
すでに起こってしまった
第三次世界大戦を止めるために現れた
謎の男の正体は?
不思議な味わいのある作品です。

〔主要登場人物〕
宇良木俊夫

…取材記者。第三次世界大戦にあたり、
 米軍空母の異常事態を取材する。
ウィリアム・C・タッシュ
…通称ウィリー。米海軍一等技術兵。
 エンタプライズⅣ号に乗船。
 異常な失踪を遂げる。
ジョニー・マクロウド
…米軍海兵。
 ウィリーの消失に立ち会う。
 宇良木にその顛末を話す。
テイス中尉
…米海軍将校。
 宇良木からの取材を断る。
フラー少佐モレッテイ大尉
…米海軍将校。情報官。
メリット中将
…米海軍司令官。
ヨゼフ・スターリン
…米海軍司令部に対して
 戦争中止を勧告しに来た謎の男。
 すでに故人となっている
 スターリンの姿をしている。

読み手は冒頭からしばらく
状況を飲み込めないままの見切り発車を
余儀なくさせられるのですが、
全6章のうちの「4」から、
第三次世界大戦の状況が描かれます。
そこには1965年に書かれたとは
思えないような記述が
いくつも現れています。

米ソの対立について、
「新しい中国が成長とともに
 しだいに自信をつけてくるまでは、

 (中略)、
 現状で釣り合いをたもつほかは
 ないという結論に甘んじていた」

中国の台頭が米ソ(米露)の
力の均衡を崩すことを、
すでに見抜いているのです。

東アジアの情勢について、
「パキスタンとインドは
 際限もなく争い、
 中共はアメリカののさばり方に
 業を煮やしていた」

65年当時、すでに顕在化していた
印パの争いは、その後、
幾たびもの小競り合いを起こし、
現在に至っていることも
事実を予見したかのようです。

その他の地域についても
「小さな局地戦が
 いたるところで火の手をあげ、
 消し方にまわる者の神経も
 しだいに昂ぶってくる、
 といったふうなのだった」

まるで昨今のロシアによる
ウクライナ侵略戦争、
イスラエルによるガザ空爆を
指しているかのようです。

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今日のオススメ!

その第三次世界大戦の
引き金については、
現在以降の未来を暗示しています。
トリガーとなったのは何と「AI」
(作品中では電脳1
~サイバー1となっている)。
「どうしてワシントンの電脳1が、
 二個以内の原爆ではソビエトは
 参戦しない、と答えたのか、
 今ではもうよく分かっていない」

AIに踊らされた結果、
最終戦争が起きたことが語られます。

さて、そうした現実との符合が
連続する中で、異質なのは
「謎の男・スターリン」の存在です。
明らかに人間以外の何者かなのです。
SF作品なのですから、
読み手はその正体を
無意識にも予想してしまいます。
恐らくは
①未来人、②異星人、③異次元人、
というのが
普通の読み手の思考でしょう。
正解はこの中にありません。
いったい彼の正体は何か?
どこから来た人類なのか?
ぜひ読んで確かめるとともに、
その面白さを十分に
堪能していただきたいと思います。
常人には思いもつかない
今日泊亜蘭の空想の力に
唖然とするはずです。

(2024.3.14)

〔「最終戦争/空族館」〕
完璧な侵略
次に来るもの
博士の粉砕機
地球は赤かった
ケンの行った昏い国
無限延命長寿法
素晴らしい二十世紀
おゝ、大宇宙!
スパイ戦線異状あり
恐竜はなぜ死んだか?
完全作家ピュウ太
最後に笑う者
秋夜長SF百物語
宇宙最大のやくざ者
オイ水をくれ
何もしない機械
古時機ものがたり
溟天の客
幻兵団
カシオペヤの女
最終戦争
天気予報
ミコちゃんのギュギュ
怪物
パンタ・レイ
ロボット・ロボ子の感傷
神よ、わが武器を守り給え
イワン・イワノビッチ・イワノフの奇蹟
坂をのぼれば…
早かった帰りの船
三さ路をふりかえるな
黒いお化け
永遠の虹の国
光になった男
まるい流れ星
空族館
つぎに来るもの
ケンの行った暗い国
ロボットを粉砕せよ!
ああ大宇宙

〔「巨匠たちの想像力・あしたは戦争」〕
召集令状 小松左京
戦場からの電話 山野浩一
東海道戦争 筒井康隆
悪魔の開幕 手塚治虫
地球要塞 海野十三
芋虫 江戸川乱歩
最終戦争 今日泊亜蘭
名古屋城が燃えた日 辻真先
ポンラップ群島の平和 荒巻義雄
ああ祖国よ 星新一
解説:斎藤美奈子

〔「巨匠たちの想像力」シリーズ〕

〔今日泊亜蘭の本はいかがですか〕
著書の多くが
現在は絶版となっているのですが、
以下の2冊がまだ流通しています。

Julius H.によるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

【こんな本はいかがですか】

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