「日本語ウォッチング」(井上史雄)
バード・ウォッチングならぬワード・ウォッチング 「日本語ウォッチング」(井上史雄) 岩波新書 この本では、現代日本語の変わりゆくさまを、さまざまな資料を使って、映し出してみる。これまでに集めた日本語の老若のことばについて...
バード・ウォッチングならぬワード・ウォッチング 「日本語ウォッチング」(井上史雄) 岩波新書 この本では、現代日本語の変わりゆくさまを、さまざまな資料を使って、映し出してみる。これまでに集めた日本語の老若のことばについて...
さすが横溝、時代エンターテインメントでも魅せてくれる 「矢柄頓兵衛戦場噺」(横溝正史) 春陽文庫 ちかごろつらつら世の中を見渡すに、慨嘆に耐えぬことばかりじゃ。わが矢柄一族にさような不心得者があろうとは思わぬ。思わぬがこ...
「その先」を雄弁に物語る和田の筆 「靴をぬがせるとき」(和田芳恵)(「接木の台」)集英社文庫 倉吉は、郁子の足もとにまわって、靴をぬがせるつもりだった。片っぽうの靴を脱がしたとき、「それだけはやめて」と、郁子がつぶやいた...
その「難解さ」こそが本作品の味わいどころ 「ユダヤの太守」(フランス/内藤濯訳)(「百年文庫057 城」)ポプラ社 …どんな罪を犯したか知らないが、十字架に掛けられた男だった。ポンティウス、あの男を覚えているかね」ポンテ...
神霊たちが行き交う妖しげな時空間 「宵山万華鏡」(森見登美彦)集英社文庫 女の子は勇気を振り絞って歩き始めた。姉に連れられて訪れた宵山で、繋いでいた手を離してしまい、一人になってしまったのだった。怖い思いに耐えて歩き続け...
これだけ悪人然とした犯人も珍しい 「まだらの紐」(ドイル/日暮雅通訳)(「シャーロック・ホームズの冒険」) 光文社文庫 恐怖に怯えた依頼者・ヘレンは、自らの身の上に起きた怪しい一件をホームズに語る。二年前に急死した姉は、...
すべてがそこに帰結しているビアスの構成 「空飛ぶ騎手」(ビアス/西川正身訳)(「いのちの半ばに」)岩波文庫 馬に乗ったまま、ひとりの男が空中を谷間へと下りて来るのだ。馬上の人は軍隊風にみごと直立の姿勢をとり、鞍にしかと腰...
作品自体は完全に「人を食った」筋書きです 「海坊主」(吉田健一)(「酒肴酒」)光文社文庫(「百年文庫059 客」)ポプラ社 男が立ち上って、明け放した障子の外の欄干を跨いで地面に降りた。飛び降りたのではないから、足が土を...
交錯する三つの世界、二人の人間、一つの想い 「あの夏を泳ぐ 天国の本屋」(松久淳+田中渉)新潮文庫 ライバルでありながら、ともに水泳をやめた麻子と朝子。見知らぬアロハの老人に導かれ、「天国の本屋」で働くことになった麻子。...
ヴァルモン、いったい腕が立つのか無能なのか… 「手掛かりは銀の匙」(バー/田中鼎訳)(「ヴァルモンの功績」)創元推理文庫 ギブス氏から受けた依頼は、晩餐会の席上で盗まれた紙入れを取り戻すことだった。会の参加者は氏の他に六...