
人間、人生、未来についての考え方が変わる本
「旅に出よう」(近藤雄生)
岩波ジュニア新書
自分と全く異なる
文化や習慣の中で生きてきた人と
出会い、話し、ともに
食べたり飲んだりすることで、
自分は計り知れない多くのものを
身体の中に染み込ませることが
できたように思っています。
本当に無数の生き方があって、
…。
忘れかけていた本を、
15年ぶりに再読しました。
2010年の出版当初に購入し、
読んで以来、
棚の奥で眠っていた本です。
改めて読みましたが、
中学生高校生にぜひ読んで欲しいと思う
内容でいっぱいです。
若い人達が読めばおそらく、
「考え方」が変わってくると思うのです。
〔本書の構成〕
はじめに
オーストラリア編1
平和な国に暮らす意味
オーストラリア編2
国ってなんだろう?
東南アジア編1
食料を得るとは?
東南アジア編2
勉強できることの幸せ
東南アジア編3
世界はみなつながっている
中国編1
絆を求めて旅をする
中国編2
腕一本で生きていく
ユーラシア横断編1
見ることと聞くことの違い
ユーラシア横断編2
帰る場所
おわりに
※詳しくはこちらから(岩波書店HP)
当時二十代後半だった著者が、
パートナーと二人で世界を旅
(それもバックパッカー的な)してきた
見聞録のような内容なのですが、
学ぶべき点がたくさんあります。
本書の味わいどころ①
人間について
多様な考え方ができるようになる
上に記したように、
著者が出会った世界のいろいろな地域の
人間の生活やものの考え方、生き方が
記されています。
そこには実際に現地で生活してみないと
(行ってみるだけでなく)わからない
人々の生活や考え方が
描かれているのです。
例えば「ユーラシア横断編1
見ることと聞くことの違い」では、
著者の接したイラン人の多くが、
家の中では酒も飲むし、
パーティーも行っているということが
記されています。
著者自身も語っているのですが、
日本にいる私たちは、イラン人全部が
敬虔なイスラム教徒であり、
戒律を厳格に守っているような
錯覚を持ってしまっていた
(そうしたイメージがメディアによって
喧伝されているからなのでしょうが)
ことに気づかされます。
「見ることと聞くこと」は
大きく違っているのです。
本書を読むことによって、
世界の人々は多様であり、
ステレオタイプな見方だけでは
いけないことに気づくはずです。
それが本書の一つめの
味わいどころとなっています。
本書の味わいどころ②
人生について
柔軟な考え方ができるようになる
著者は東大卒という
最高の学歴を持ちながら、
安定的な生活や高収入な仕事を
目指すわけではなく、
あえて不安定な生き方を選んでいます。
しかしそこには自由があり、
発見があり、それまで気づけなかった
楽しさがあったことが記されています。
就職して安定的に収入を得ることも
大切なことですが、
人生それだけではないのです。
5年間もの旅に出たことも素敵ですが、
その旅を終え、帰国した後も、
ライターとして生活することを
選択していることが一層魅力的です。
東大工学部卒という学歴よりも、
5年間で得た自分の本当の力で
勝負しようとする、その考え方は、
若い人たちに大きな視点の変化を
もたらすはずです。
それが本書の二つめの
味わいどころであると考えます。
本書の味わいどころ③
未来について
明るい考え方ができるようになる
そして何よりも、
私たちの未来は明るいのだと
感じることができるはずです。
自分はもっと自分らしく
生きることができる、
世の中にはまだまだ
自分の知らない友人がいる、
世界は、そして世界の人々は
もっとわかり合える、
困難なことが生じても
人生は何とかなる、
そんな希望を抱かせる記述を、
本書のいたるところで
見つけることができます。
それが本書の
最大の味わいどころであり、
それゆえに中学生高校生に
ぜひ読んで欲しいと思うのです。
思えば本書刊行の2010年以降、
暗い世相が当たり前になってしまった
感があります。
東日本大震災、
連続する異常気象、
コロナ禍、
能登半島大地震等々。
明るく希望を持つことのできる本書を、
若い人たちだけでなく、
若くない大人のあなた(失礼!)にも、
ぜひご賞味いただきたいと思います。
(2025.2.10)
〔本書の著者:近藤雄生氏の本〕
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大人が読んでも読み応えがあります。

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