「曇った硝子」(森茉莉)
静かに浮かび上がる作者の実生活とその情念 「曇った硝子」(森茉莉)(「女体についての八篇 晩菊」) 中公文庫 魔利の部屋では何でもがすぐに無くなる。まるで魔のように、無くなる。すると、不安な心と、小さな後悔とが、魔利の胸...
静かに浮かび上がる作者の実生活とその情念 「曇った硝子」(森茉莉)(「女体についての八篇 晩菊」) 中公文庫 魔利の部屋では何でもがすぐに無くなる。まるで魔のように、無くなる。すると、不安な心と、小さな後悔とが、魔利の胸...
本書のすべてが小柴昌俊の自叙伝 「ニュートリノの夢」(小柴昌俊) 岩波ジュニア新書 一九八七年二月二三日。地球から一六万光年も離れた大マゼラン雲で、超新星の爆発が観測されました。星というのは変わらないものと思われています...
来たのは迷惑系美少女未来人! 「闇から来た少女」(眉村卓)(「二十四時間の侵入者」)角川文庫 この団地には美少女の妖怪が現れる。その噂話をまったく信じていなかった克雄だったが、彼が出会った美少女・大森由美子は、彼の目の前...
最後まで冗談なのか本気なのかわからない 「青い十字架」(チェスタトン/中村保男訳)(「ブラウン神父の童心」) 創元推理文庫 パリ警察のヴァランタンは、怪盗フランボウ捕縛のために、ロンドンへと向かう。彼が偶然立ち寄ったレス...
「幽霊」そのものではなく、その役割を味わうべき作品 「もうひとり」(H.ジェイムズ/大津栄一郎訳)(「ヘンリー・ジェイムズ短篇集」) 岩波文庫 伯母の屋敷を相続した二人の独身老女スーザンとエミリー。孤独に飽いていた二人は...
彼らは教室二〇五号でいったい何を見つけるのか? 「教室二〇五号」(大石真)実業之日本社 友だちと諍いを起こし、授業をサボった六年生の友一は、物置小屋の中に不思議な地下室を見つける。恐る恐るのぞいてみると、中には二年生の明...
全篇に竹中英太郎の妖しげな挿絵が満載 「青蛇の帯皮」(森下雨村)(「挿絵叢書 竹中英太郎(二)」)皓星社 かつては全国に及ぶまで、梟名高く夢魔のごとく世人を脅かした「幽霊盗賊」百面相の鮫崎仙助が忽焉として消え去ってから幾...
本作品が問いかける「才能とは何か」 「石灰石」(シュティフター/手塚富雄訳)(「みかげ石 他二篇」)岩波文庫 石灰岩台地の広がるシュタインカールの地を、測量のために訪れた「わたし」は、貧しい姿の牧師と再会する。ある日、突...
それらを失ってしまった令和の現代こそ 「四月になれば彼女は」(川上健一) 集英社文庫 あの卒業式の三日後の一日こそがターニングポイントでありエポックメーキングなのだと強く思えるのだ。十八歳の、まだ坊主頭の、冬も終わりに近...
すっきりしたリライト、その「減量」が効果を発揮 「魔術師(少年探偵版)」(江戸川乱歩) ポプラ社 実業家の福田のもとに届く連続数字は殺人予告か!?厳重な警戒の網をかいくぐって凶行は行われた。警備の巡査とともに甥の二郎が寝...