
公務員とはこんなにも魅力のある仕事だったのか!
「公務員という仕事」(村木厚子)
ちくまプリマー新書
公務員という仕事は
とてもおもしろく、また、
世の中の役に立つ、
価値のある仕事です。
そして、それを通じて自分自身が
大いに成長できる
仕事でもあります。
だから、若い方々にもぜひ、
公務員という仕事を
選んでほしいと心から…。
若い方向けの、
仕事について書かれた本は
数え切れないほどあります。
「スポーツインストラクターになるには」
「トリマーという仕事」など、
カタカナ言葉の職業や
子どもたちに人気のある職業は
多いのですが、意外と少ないのが
「公務員」について書かれた本です。
「公務員」と一口で言っても
その業務は多種多様であることが
原因なのでしょうが、
それにしても少なすぎます。
本書はそうした意味で希少種であり、
一読の価値ありです。
〔本書の構成〕
はじめに 公務員とはどんな仕事か
第一章 公務員の務めと求められる力
第二章 公務員の仕事①
第三章 公務員の仕事②
第四章 公務員の働き方
第五章 これからの公務員
おわりに
本書の味わいどころ①
公務員という仕事の本質を知る
ともすれば
「安定している」ということだけが
クローズアップされ、
「でもつまらない」という
イメージが先行し、
「公務員離れ」という現象まで
引き起こしている
職業ではあるのですが、
その魅力をここまで丁寧に拾い上げ、
説得力ある言葉で語った本は
なかったのではないでしょうか。
「ニーズの翻訳家」
「五〇を一〇〇にする仕事」
「黒子として全体に奉仕」
「感性でニーズを汲みとる」
「制度を組み立てる企画力」など、
第一章の小見出しを
拾い上げるだけでも公務員という
仕事の魅力が伝わってくるのです。
筆者がいかに誇りを持って仕事に
取り組んできたかがよくわかります。
もちろ「公務員」には多様な職種があり、
当てはまらない
業務もあるのでしょうが、
その理念はどの公務員の仕事でも
同じであるとともに、すべての職業に
通じるものであるはずです。
自らの職業の意義や役割を
冷静に分析し、
その責任や使命を果たすために
何が必要となるかを考えることが
大切ということなのでしょう。
この、公務員という仕事の
本質を知ることこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
自らを成長させる大切さを知る
本書のいたるところに現れているのが、
筆者自身の「成長体験」です。
配置転換や出向、昇進などで
その業務内容や業務環境、
責任の範囲が変わったとき、
それをチャンスと受け止め、
自らの成長のステップとしている
筆者の姿勢に心を打たれます。
「仕事とはこのような心構えで
望むものだ」と、
教え諭されているような気がしました。
ともすれば「自分のやりたいこととは
違っていた」という理由で、
就職直後早々にやめてしまう
若者が多くなりましたが、
何事も自分の成長の
材料にできるのであり、
そうした姿勢こそが
生きる上で大切なのです。
この、自らを成長させる大切さを
知ることこそ、本書の
第二の味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
ところで筆者・村木厚子氏は、
2009年に冤罪事件に巻き込まれ、
約5ヶ月間もの間、身柄を拘束される
不幸に遭遇しています。
幸いにも無罪が確定、その後、
著者を逮捕した検察官の
証拠改竄が暴かれるという
異例の事態に発展し、
当時大きな話題になりました。
おそらく著者はその「不幸な体験」すらも
自らの成長の肥やしに
しているのではないかということが
うかがえる文章もあります。
これもまた公務員という仕事に対する
誇りの現れなのでしょう。
本書の味わいどころ③
法律ができるまでの裏側を知る
本書で説明されているのは
著者が経験した「国家公務員」、それも
「厚生労働省」での業務についてです。
そこで筆者が体験した
福祉や女性の地位向上に関わる
法案作成の仕事の様子が
記されているのです。
「法律」とは誰かがつくって
国会で審議されるもの、
程度の感覚しかなかったのですが、
その裏側を知ることができるのも
本書の味わいの一つなのです。
「社会に起きている問題を発見する」
「状況を調査し分析する」
「他の団体から情報収集する」
「必要な法律の内容を考える」
「関係諸機関と連絡調整をする」
「ステークホルダーに対して
丁寧に説明する」等々、
「考えて終わり」ではなく、
法案を作る以前に、
そしてつくった以後に、
これだけの大変な作業が
存在していたとは驚きです。
この、私たちの生活に重要な意味を持つ
「法律」ができるまでの
複雑な過程を知ることこそ、
本作品の隠れた
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
公務員とは
こんなにも魅力のある仕事だったのか!
と、自分も
公務員であるにもかかわらず、
感嘆してしまいました。
自分の仕事に対する姿勢は
まだまだ浅かったのかと
反省もした次第です。
「安定してる」ことだけが取り上げられ、
「つまらない仕事」という
イメージが先行し、
「お役所仕事」と揶揄されることも
多々あり、何かあれば
「バッシングされる」公務員ですが、
実はこんなにもやりがいのある
職業だったのです。
中学生高校生に
ぜひ読んでほしい一冊です。
いや、大人のあなたにも
強くお薦めします。
ぜひご賞味ください。
(2025.6.2)
〔関連記事:生き方を考える新書〕




【今日のさらにお薦め3作品】



【こんな本はいかがですか】