
不登校についての新しい気づきが得られる
「脇役になれない子どもたち」
(桑島隆二)アメージング出版
日本の不登校対策は完全に
行き詰まってしまったのです。
社会で働く多くの大人たちは、
ありのままの自分を受け入れて
生活しています。
それならば、
不登校の子どもたちはどうして
ありのままの自分を
受け入れられなくなったのか…。
不登校が恐ろしいだけ増えています。
その対応で手一杯の状態が
教育現場では慢性的になっています。
専門家は
「無理に学校に行かせる必要はない」
「今は蝶になる前のさなぎの期間であり
見守ることが必要」と
助言してくれるのですが、
見守っているうちに
義務教育卒業を迎え、
社会との関係性が
絶たれてしまうのです。
蝶になることなく
「さなぎ」のまま引きこもってしまった
生徒を何人見てきたことか。
これでいいのだろうかと
日々考えていた矢先、
本書に出会いました。
読んで気持ちがすっきりしました。
本書を読めば、不登校についての
新しい気づきが得られるはずです。
〔本書の構成〕
はじめに
第1章 「みんな主役」によって
特別感を抱いた子どもたち
第2章 自己評価と自己肯定感の勘違い
第3章 自己評価が高まると
他人を見下す
第4章 自分は脇役だと気がついたとき、
不登校がはじまる
第5章 どうして不登校の理由が
言えないのか
第6章 子どもに特別感を抱かせない
関わり方
第7章 いま不登校の子どもたちを
どうするのか
おわりに
本書の味わいどころ①
不登校の原因を論理的に考える
私が「不登校」に関して感じていた
モヤモヤの一つは、
「不登校対策」についての検証を
文科省が行っていないことです。
いろいろな対策が
講じられたにもかかわらず、
不登校が増加しているということは、
その対策が
まったく無意味であったとしか
考えられないのです。
その問題について、本書はしっかりと
正面からぶつかっています。
「不登校を増加させてしまった原因を
過去からの変化という点で捉え、
変化を現代の
モラルに合わせて修正し、
いま以上に不登校を増加させない
対策を取る必要に迫られています」。
「はじめに」にあるこの一文が、
本書の姿勢を示しています。
不登校の原因について
論理的に考えることこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わってください。
本書の味わいどころ②
「自己肯定感」について再考する
学校現場では、子どもたちの
「自己肯定感を高める」ことが
ことあるごとに言われています。
その考え方自体は
間違ってはいないと思うのですが、
そのための手段としてあげられる
「とにかく褒めまくる」
「他と比べない」
「順位を知らせない・わからせない」
などには疑問を感じていました。
その点についても本書は
しっかりと答えてくれています。
自己評価と自己肯定感のちがい、
自己肯定感が低下する本当の理由、
それが不登校につながっていく
実態について、実例をもとに
懇切丁寧に解説しています。
「自己肯定感」なるものについて再考し、
不登校との関連を考えることこそ、
本書の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わってください。
本書の味わいどころ③
「受け入れる」ことの意味を問う
「ありのままの自分でいいんだよ」は
よく聞くフレーズですが、
「自分を受け入れる」とは
具体的にどんなことなのか、
私はよくわからないまま
過ごしてきたような気がします。
本書はその点についても
心理学の立場から
明確に定義づけしています。
「受け入れる」とはどんなことなのか、
不登校の子どもたちは
なぜ自分を「受け入れられない」のか、
ありのままの自分を
「受け入れる」ためには何が必要なのか、
そのために大人たちは
子どもにどんな対応をするべきなのか。
本書はいろいろな角度から
解説しています。
自分を「受け入れる」ことの意味を問い、
その答えを考えることこそ、
本書の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わってください。
私自身は、これまで抱えていた
モヤモヤ感がすっきりし、
視界が良好となった感覚があります。
不登校の子どもを抱えた保護者、
学校関係者、いやすべての大人たちが
読むべき一冊と感じます。
ぜひご賞味ください。
(2025.6.9)
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