「二十四時間の侵入者」(眉村卓)

中学校一年生の心で読むべきSFジュヴナイル

「二十四時間の侵入者」(眉村卓)
(「二十四時間の侵入者」)角川文庫

何もない空間から
突然現れた少年は、明らかに
敵意のある目をしていた。
目撃した
隆一と未代子の学校にも、
その少年は姿を見せる。
やがて同一の顔の集団で現れた
少年たちは、
瞬く間に学校を占拠する。
囚われた隆一と未代子は…。

眉村卓のSFジュヴナイルです。
確か中学校一年生のときに
読んだ記憶があります。
したがって私は
45年ぶりの再読となります。
そのときのわくわく感を思い出しながら
読むことができました。

〔主要登場人物〕
住野隆一

…中学校一年生。謎の少年を目撃し、
 事件に巻き込まれる。
小沢未代子
…隆一の同級生。
岡本義助
…隆一の叔父。SF小説作家・紺原玲。

本作品の味わいどころ①
異次元からの侵略

侵略者が異次元から現れる。
宇宙よりも異次元からの方が
ワクワクします。
宇宙船よりも異次元転移装置の方が
科学的により高度な雰囲気があり、
いかにもSFチックです。
さらに侵略者の風貌も
大人ではなく少年。
謎の少年という雰囲気が
さらに魅力的です。
しかも同一の顔の集団。
説明がなくてもクローンかサイボーグ、
もしくはロボットであることが
わかります。
さらには舞台となる学校だけでなく、
日本の各地(もしかしたら世界の各地)で
同様の侵略劇が
同時進行で起きているという
スケールの大きな筋書きなのです。

まあ、その設定は
必ずしも高度とはいえません。
今読むと「子どもだまし」であることは
十分にわかります。
でも、それでいいのです。
SFジュヴナイルは
いかに少年の心をときめかせるかが
大切なのです。
この異次元からの侵略という設定こそ、
本作品の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。

本作品の味わいどころ②
主役は中学一年生

主役は中学校一年生の男女。
住野隆一と小沢未代子。
しかもこの二人以外に
筋書きに関わるのは、
隆一の叔父のSF作家のみ。
もちろん役どころは
中学生二人ではできないこと
(新聞社への調査依頼等)であり、
大人の出番は
最小限に抑えられています。
侵略者に学校を占拠されたのに、
大人の先生たちはまったく出番なし。
反撃し、鎮圧するのは隆一なのです
(叔父さんは
そのきっかけをつくるのみ)。
今読めばリアル感にかけること
甚だしいのですが、これでいいのです。
SFジュヴナイルは、
少年少女の活躍こそがすべてなのです。
この主役は中学一年生という設定こそ、
本作品の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。

本作品の味わいどころ③
勝利で迎える結末

というわけで、
隆一のとっさの判断で見事鎮圧に成功。
各地の侵略も同じように収束。
学校に平和が戻るとともに、
世の中も元通りになるのです。
あまりにもあっけない
幕切れとなるのですが、
これでいいのです。
SFジュヴナイルは
シンプルがベストなのです。
この、勝利で迎える結末こそ、
本作品の第三の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。

もちろん
突っ込みどころは多々あります。
少年たちをコントロールしている装置は
思い切り目立つのに、
その警備はなされていないため、
簡単に破壊されました。
高度な科学力にしてはお粗末すぎます。
政府中枢を狙うのではなく、
地方の中学校を占拠する意味は
どこにあるのか不明です。
そもそも占拠して
何をしようとしていたのかも謎です。
大人が大人として読んでしまえば、
いくつもの疵ばかりが
目立ってしまうのです。
本作品はやはり、
中学校一年生の心で読むべき
作品なのです。

かつてこうしたSFジュヴナイルが、
昭和50年代は身のまわりに
たくさんあったと感じています。
幸せな時代でした。
昭和の時代に子どもだったあなた、
令和の現代、
再び読み返してみませんか。

※私がかつて読んだのは、
 角川文庫版ではなく、
 秋本文庫版だったような
 気がするのですが…。
 記憶が定かではありません。

(2025.8.29)

〔併録作品〕
「闇からきた少女」

「闇から来た少女」

この団地には
美少女の妖怪が現れる。
その噂話をまったく
信じていなかった克雄だったが、
彼が出会った美少女・
大森由美子は、
彼の目の前で煙のように
姿をかき消してしまう。
再び現れた由美子は、克雄を
別の世界へと連れ去るが…。

〔関連記事:眉村卓の作品〕
「なぞの転校生」(1967)
「侵された都市」(1967)
「まぼろしのペンフレンド」(1970)
「テスト」(1970)
「時間戦士」(1970)
「さすらいの終幕」(1970)
「ねらわれた学園」(1973)
「0からきた敵」(1973)
「ねじれた町」(1974)
「地獄の才能」(1975)
「閉ざされた時間割」(1977)
「少女」(1977)
「白い不等式」(1978)
「原っぱのリーダー」(1992)

〔角川文庫・眉村卓作品〕

EnriqueによるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

「生きている腸」
「錯覚屋繁盛記」
「最終戦争」

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