
ジャーナリズムの本質とは何かに迫る
「ジャーナリストという仕事」
(斎藤貴男)岩波ジュニア新書
ジャーナリストの役割とは
何でしょうか。
わたしは「権力のチェック」が
最大にして最低限の機能だと
思っています。
権力というものは、
ときに暴走して、
普通の人間の暮らしを
踏みにじる場合があるからです。
知り得た事実を、広く…。
岩波ジュニア新書には、
いろいろな職業の魅力を
中高生に伝えようとする意図で編まれた
良書が多数見られます。
本書もその一つなのだろうと思い、
読み始めたのですが、
それだけではありませんでした。
ジャーナリズムの本質とは何かに迫る、
重厚な内容の一冊です。
〔本書の構成〕
1 ジャーナリストって何だろう?
2 取材のイロハ
―新聞の世界に飛び込んで
3 「なんでも取材してやろう」
―週刊誌記者の世界へ
4 誰の視点に立つか
―フリーであることの意味
5 価値判断が問われる
―留学と「機会不平等」をめぐって
6 岐路に立つジャーナリズム
おわりに
本書の味わいどころ①
メディアの記事の多角的な見方を知る
ジャーナリズムの本質に迫るために
筆者は、いくつかの
新聞記事・雑誌記事の例を挙げ、
その陰に隠されているものを
考えることが大切であると
述べています。
「苦渋の選択を
国民に受け入れてもらえるように
説得するのが政治の役割」とした
国会議員の言葉を
中学生が好意的に受け止めた、という
内容の記事を取り上げ、
そこに財政赤字増大の視点が
抜け落ちている(記事が意図的にそれを
見えなくしている)ことを
指摘しているのです。
本書を読めば、私たちがいかに
書かれてあることの表面しか
とらえられていないかが
痛切に理解できます。
記事の裏側にある
事象の本質を読み取ることが
大切なのだと気づかされるのです。
この、メディアの記事の
多角的な見方を知ることこそ、
本書を読む上での学びであり、
本書の第一の味わいどころなのです。
しっかりと味わいましょう。
本書の味わいどころ②
ジャーナリストの多様な在り方を知る
本書には、著者が関わった
さまざまな出版社や出版人、
文化人、記者、ジャーナリストたちが
登場します。
それぞれの編集方針によって
集められる記事が異なり、
書かれる文章が異なることを
筆者は説明しています。
とくに日本特有の形態である
「記者クラブ」について、
筆者は鋭く切り込んでいます。
本来権力を
チェックするべきメディアが、
権力に懐柔され、
権力の太鼓持ちになっている現状を
詳しく紹介しているのです。
しかも一方的な非難にとどまらず、
「記者クラブ」の
メリットとデメリットの両方を指摘し、
あるべき報道の姿に言及しています。
ジャーナリストの多様な在り方を
知ることこそ、
本書を読む上での学びであり、
本作品の第二の
味わいどころとなるのです。
じっくりと味わいましょう。
本書の味わいどころ③
ジャーナリズムの本質と意義を考える
それらを通して終始語られるのが
「ジャーナリズムとは何か?」です。
特に第6章
「岐路に立つジャーナリズム」では、
朝日新聞の従軍慰安婦記事撤回に関わる
一連の動きを取り上げ、
我が国のジャーナリズムが
崩壊しかけていることを
わかりやすく解説しています。
ここでもやはり、
権力にすり寄るのではなく
屈するのでもなく、
権力を厳しくチェックする姿勢が
ジャーナリズムの本質であると
解き明かしているのです。
「首相と会食したければすればいい。
ただしそれは、肩書きのある人が
呉越同舟で、ではなく、
もともと深く食い込んでいる記者が
独自に、かつ、
権力の基盤を揺るがすような
大ネタをつかんだ上で、
その真贋を確かめる場合でなくては
なりません」。
この一節がすべてを説明しています。
ジャーナリズムの
本質と意義を考えることこそ、
本書を読む上での学びであり、
本作品の最大の
味わいどころとなっているのです。
たっぷりと味わいましょう。
やはり岩波ジュニア新書は
中高生向けにとどまりません。
大人が読んでも
十分に読み応えがあります。
本書中には、筆者が書き表した
ルポなどがいくつか紹介されています。
それらを読みたくなること
間違いなしです。
本書をきっかけに、
世の中の諸問題を見つめ直す
読書の旅が始められそうです。
(2025.9.22)
〔斎藤貴男氏の著書はいかが〕
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