「橋本式国語勉強法」(橋本武)

書かれてあるのは、勉強方法ではなく楽しみ方

「橋本式国語勉強法」(橋本武)
 岩波ジュニア新書

若者は自由であるべきです。
しかし自由とは
放縦の同義語ではありません。
自由を育てるのは規律であり、
自律の精神であると思えば、
伸びざかりの時期に、
可能性へのトレーニングに
打ちこむことが、
若者だけの持つ輝かしい誇り…。

灘校で50年間教壇に立ち、
その独特の授業が
脚光を浴びることとなった
伝説の国語教師・橋本武が、
満100歳の年にまとめた
(1968年に出版されたものに加筆修正)
国語の勉強法です。
多くの方にとって国語は学生時代、
最も「学習しない教科」
だったのではないかと思います。
さて、どんな学習方法なのか?

〔本書の構成〕
はじめに
1 心構え
 一 灘校と私
 二 あなたと国語
 三 国語勉強の心構え
2 現代文
 一 現代文を勉強するための
    四つのテキスト
 二 読み方の基本
 三 現代文の勉強法 「銀の匙」を例に
 四 要約のトレーニング
 五 記述式答案の書き方
3 古文
 一 基礎学力をつけるために
 二 応用力を養うために
4 漢文
 一 漢文勉強の出発点
 二 漢文実力の増進法
 三 漢文勉強の楽しさ
 四 漢文勉強の到達点
5 文法
 一 勉強のポイント
 二 文法勉強の実際
 三 敬語
6 文学史
 一 文学史勉強の心構え
 二 勉強の方法
7 まとめ
 一 七つのポイント
 二 大学入試の対策
あとがき

本書の味わいどころ①
効率主義ではなく本物志向

もしあなたが高校三年生で、
大学受験を考えていて、
国語の成績が振るわず、なんとかして
短時間で得点アップを図りたい…と
考えているなら、
この本を読んでも成果は
得られないのではないかと思います。
本書で紹介されているのは
「大学受験にも通用する
学習法」ではあるのですが、
「大学受験のための
学習法」ではないのです。
かなり時間と手間のかかる方法であり、
非効率この上なしです。

しかし、ここには
本当の「学び」の姿があります。
単にテストで点を取るための
テクニックではなく、
「国語」という学問における
「学び方」が紹介されているのです。

例えば「3 古文」で挙げられている
学習法は、
①本文をノートに書き写す。
②参考書の通訳を(単語ごとに区切って)
本文にあてはめて記入する。
というものです。
まったく効率的ではありませんが、
例示されている記入例を見ると、
現代文と古文の構造の違いや
助詞・助動詞の働きの特徴が
視覚的に捉えることができ、
古文の深い理解につながることは
間違いなさそうです。
この、効率主義ではなく
本物志向の学習方法が
紹介されていることこそ、
本書の第一の味わいどころなのです。

本書の味わいどころ②
受験対策ではなく生涯学習

つまり、本書に記されているのは、
受験対策ではないのです。
日本人である以上、
国語は一生涯付き合うべき学問であると
橋本は捉えているのです。
「私たちの国語を尊重することは、
 自らの歴史を尊重し、
 自らの生活に誇りを
 持つことであると言えます」

また、このようにも述べています。
「外国人でも半年もあれば
 不自由を感じなくなる日本語を、
 生涯勉強する必要があるのは、
 ただことばの意味がわかり、
 日常生活に事足りれば
 それでよいからではありません。
 国語を通じて
 人間形成がなされるからです」

日本人が日本人として
日本という国で生きていく以上、
最も必要となるのは日本語であり、
意図するかしないかにかかわらず、
人生の最後まで学び続けるのが
国語ということなのです。
この、受験対策ではなく
生涯学習としての学びの方法が
示されていることこそ、本書の第二の
味わいどころとなるのです。

本書の味わいどころ③
勉強方法ではなく楽しみ方

そうした意味では、
本書に記されているのは
勉強方法といった堅苦しいことではなく
国語の「楽しみ方」なのだと感じます。
受験のための苦学ではなく、
国語と生涯付き合っていく上での
楽しみ方の伝授なのです。
私たちは本来、
自分が趣味と感じていることについては
いくらでも
手間暇を惜しまないはずです。

そして学ぶ楽しさが
感じられるようになれば、
人は自然と
次のステップへと進んでいくのです。
現代の教育で重視されている
「自ら学ぶ」。
それが半世紀以上前に
すでに完成されていたのですから
驚きです。
この、勉強方法ではなく
あくまでも「楽しみ方」として
国語を捉え直すことこそ、
本書の最大の
味わいどころとなっているのです。

したがって、本書は高校生だけでなく、
大人が読んでも
役立つ内容となっているのです。
もちろん多くの大人の方は、
本書に書かれてあるような
ノートに古文を書き写すなどと
いうことはしないでしょうし、
する必要もないでしょう。
しかし本書に書かれてある
「学び方」のエッセンスは、
国語という教科を超え、
受験という目的を超え、
読み手の年齢を超え、
さらには時代を超え、
すべての人間の学びに応用できる、
普遍性を持つものと考えられるのです。

新しい年が明けました。
自分自身をアップデートしたいと
考えているあなたに、お薦めします。
ぜひご賞味ください。

(2026.1.2)

〔関連記事:橋本武の本〕
「〈銀の匙〉の国語授業」
「銀の匙」(中勘助)

〔橋本武の本はいかがですか〕

SabineによるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

「父と娘の法入門」
「光が照らす未来」
「30代記者たちが出会った戦争」

【こんな本はいかがですか】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA