「神様、お慈悲を!」(リール)
乞食道を精進する、師弟二人。 「神様、お慈悲を!」(リール/山崎恒裕訳)(「百年文庫093 転」)ポプラ社 大聖堂の南玄関の一等地をあてがわれ、許可書まで手に入れている物乞いのハンス。老境にさしかかった彼は、同業の若者・...
乞食道を精進する、師弟二人。 「神様、お慈悲を!」(リール/山崎恒裕訳)(「百年文庫093 転」)ポプラ社 大聖堂の南玄関の一等地をあてがわれ、許可書まで手に入れている物乞いのハンス。老境にさしかかった彼は、同業の若者・...
押し寄せる現実的な恐怖、しかし最後に清涼剤 「黒い小屋」(コリンズ/中島賢二訳)(「夢の女・恐怖のベッド 他六篇」) 岩波文庫(「百年文庫093 転」)ポプラ社 おねえちゃんは今、この家で一人っきりなんだよな。可愛い声で...
擬態して周囲と同化する力=消滅(ディスパリション) 「オノレ・シュブラックの失踪」(アポリネール/菅野昭正訳)(「集英社ギャラリー世界の文学8」) 集英社 綿密きわまる捜査にもかかわらず、警察は、オノレ・シュブラックの失...
基準は「考える」、いや「面白さ」かも!? 「「考える人」は本を読む」(河野通和)角川新書 心を動かされた本の話をいろいろ集めたつもりです。読書案内ふうの体裁ですが、系統だったものではありません。整理されすぎたガイドブック...
穏やかな時間が流れていきます 「人形使いのポーレ」(シュトルム/松永美穂訳)(「みずうみ/三色すみれ/ 人形使いのポーレ」) 光文社古典新訳文庫 旅回りの人形芝居を観た「わたし」は、夢に人形カスペルルが現れるほどに魅了...
やはり言葉は面白い。いや、日本語が面白い。 「ことばの道草」(岩波書店辞典編集部編) 岩波新書 語源をたずねると、「ことば」が身近になる。語義の変化を知ると、「ことば」の豊かさを実感する。これは、「広辞苑」改訂に携わるな...
「幽霊」そのものではなく、その役割を味わうべき作品 「もうひとり」(H.ジェイムズ/大津栄一郎訳)(ヘンリー・ジェイムズ短篇集) 岩波文庫 伯母の屋敷を相続した二人の独身老女スーザンとエミリー。孤独に飽いていた二人は、屋...
本作品が問いかける「才能とは何か」 「石灰石」(シュティフター/手塚富雄訳)(「みかげ石 他二篇」)岩波文庫 石灰岩台地の広がるシュタインカールの地を、測量のために訪れた「わたし」は、貧しい姿の牧師と再会する。ある日、突...
それらを失ってしまった令和の現代こそ 「四月になれば彼女は」(川上健一) 集英社文庫 あの卒業式の三日後の一日こそがターニングポイントでありエポックメーキングなのだと強く思えるのだ。十八歳の、まだ坊主頭の、冬も終わりに近...
ブスカベアタ爺さんの警察顔負けの捜査 「割符帳」(アラルコン/会田由訳)(「三角帽子 他二篇」)岩波文庫(「百年文庫093 転」)ポプラ社 ブスカベアタ爺さんが丹念に育てた南瓜は、収穫を迎えた朝、何者かに盗まれ、畑から消...