「ばらの花五つ」(片山廣子)
時代の変化に負けずに生きて行く覚悟 「ばらの花五つ」(片山廣子)(「ともしい日の記念」)ちくま文庫(「百年文庫067 花」)ポプラ社 ばらの花を五つ、ただ無心する気はないのであったが、新しいばら園の主人は代を取るというこ...
時代の変化に負けずに生きて行く覚悟 「ばらの花五つ」(片山廣子)(「ともしい日の記念」)ちくま文庫(「百年文庫067 花」)ポプラ社 ばらの花を五つ、ただ無心する気はないのであったが、新しいばら園の主人は代を取るというこ...
ほろ苦さと切なさの漂う読後感ですが… 「交叉点」(丹羽文雄)(「百年文庫060 肌」)ポプラ社 妻の死をきっかけに自暴自棄となり、横浜の場末のアパートに流れ着いた川上。彼は隣室に住む高校生にも思える風貌の娘・友子に興味を...
屈折した自分を客観的に表現した「魔利像」 「薔薇くい姫」(森茉莉)(「薔薇くい姫/枯葉の寝床」) 講談社文芸文庫(「百年文庫067 花」)ポプラ社 魔利は、腎臓という持病持ちだが、この病気が魔利の体にとり憑いたのは十二の...
理屈で割り切れない女の情念 「屍を嘗めた話」(加能作次郎)(「世の中へ/乳の匂い」) 講談社文芸文庫 十日ばかり凪が続き、海は大漁旗を掲げた烏賊釣り船ばかりであった。ある日、出港前の空に怪しい雲が見られ、漁を見送った船が...
時代特有の「しなやかさ」と「たくましさ」 「ツンバ売りのお鈴」(舟橋聖一)(「百年文庫060 肌」)ポプラ社 執筆のために「私」がカンヅメにされた旅館。一度目の宿泊では仲居が数えた紙幣が二枚不足、二度目には財布が行方不明...
続「記者に覗かせ、読み手に覗かせる」 「続蘿洞先生」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 蘿洞先生が近頃奥さんを貰ったと云う噂がある。真偽は保證の限りでないが、しかし先生のことであるから、こっそり世間に知らせ...
記者に覗かせ、読み手に覗かせる 「蘿洞先生」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 A雑誌の訪問記者は、蘿洞先生に面会するのは今日が始めてなのである。それで内々好奇心を抱いて、さっきから一時間以上も待っているの...
ラスコーリニコフになれない「私」 「私のソーニャ」(八木義徳)(「私のソーニャ/風祭」) 講談社文芸文庫 娼婦S子に対する「私」の想いは、いつしか愛情へと変化する。「私」はS子にまっとうな仕事を世話するが、「そんな仕事イ...
「私」と与一の夫婦、六年間を経て何が変わったのか 「小区」(林芙美子)(「清貧の書・屋根裏の椅子」) 講談社文芸文庫 朝からの長い夫婦喧嘩の後、仲直りを匂わせる夫・与一に対し、「私」の気持ちは収まらない。一日中、二階にと...