「赤い屋根」(谷崎潤一郎)
その女を自分好みにカスタマイズ 「赤い屋根」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 此の男を巧く欺して、いいように操ってやることが面白くもあり、それほど自分に腕のあることが愉快でもあった。ところが、それがそうで...
その女を自分好みにカスタマイズ 「赤い屋根」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅡ」)中公文庫 此の男を巧く欺して、いいように操ってやることが面白くもあり、それほど自分に腕のあることが愉快でもあった。ところが、それがそうで...
静かに浮かび上がる作者の実生活とその情念 「曇った硝子」(森茉莉)(「女体についての八篇 晩菊」) 中公文庫 魔利の部屋では何でもがすぐに無くなる。まるで魔のように、無くなる。すると、不安な心と、小さな後悔とが、魔利の胸...
凝縮し、結晶化したような最後の一文 「黄泉から」(久生十蘭)(「久生十蘭短篇選」)岩波文庫(「文豪怪談傑作選・昭和篇」) ちくま文庫 ルダンさんの家庭塾には光太郎ばかりではなく、光太郎のただひとりの肉親である従妹のおけい...
緩やかな死を体感する人間の悲しみ 「冬の蠅」(梶井基次郎)(「梶井基次郎全集」)ちくま文庫(「百年文庫068 白」)ポプラ社 冬の蠅とは何か?よぼよぼと歩いている蠅。指を近づけても逃げない蠅。そして飛べないのかと思ってい...
男女の結びつきが主題となっている、きわどい作品群 「百年文庫060 肌」ポプラ社 百年文庫第60巻を読了しました。テーマは「肌」。その漢字一文字が表すように、男女の結びつきが主題となっている、きわどい作品が集められていま...
味わいどころは「私」の父に対する愛情 「つらつら椿」(城夏子)(「百年文庫067 花」)ポプラ社 そういうわけがありましたんやで。茜さんのお父さんはなあ。三度もおくさん更えなはった、我儘なお人やという人も、世の中にはいる...
絶品のミステリ&純文学&ショートショート 「骨仏」(久生十蘭)(「墓地展望亭・ハムレット 他六篇」) 岩波文庫 床ずれがひどくなって寝がえりもできない。梶井はあおのけに寝たまま、半蔀の上の山深い五寸ばかりの空の色を横眼で...
時代の変化に負けずに生きて行く覚悟 「ばらの花五つ」(片山廣子)(「ともしい日の記念」)ちくま文庫(「百年文庫067 花」)ポプラ社 ばらの花を五つ、ただ無心する気はないのであったが、新しいばら園の主人は代を取るというこ...
ほろ苦さと切なさの漂う読後感ですが… 「交叉点」(丹羽文雄)(「百年文庫060 肌」)ポプラ社 妻の死をきっかけに自暴自棄となり、横浜の場末のアパートに流れ着いた川上。彼は隣室に住む高校生にも思える風貌の娘・友子に興味を...