カテゴリー: 11 明治生まれの作家
「押川春浪幽霊小説集」(押川春浪)
現代の私たちが読むと噴飯もの、でも… 「押川春浪幽霊小説集」(押川春浪) 国書刊行会 オオ、真の幽霊!真の幽霊なるものありやなしや、恐らくはなかるべし。果たしてなきかと問われれば、余は「然り」と断言することが出来ぬのであ...
「黑髮」(鈴木三重吉)
家船の若い男女の、実らぬ恋の悲しい物語 「黑髮」(鈴木三重吉)(「千鳥 他四篇」)岩波文庫 私が戀をした女はおふさと言つた。おふさが船は酒、煮肴、壽司などを賣つてゐた。大きな浦へ着けた時には、おふさが船は石崖の上に蓆の小...
「金時計」(泉鏡花)
若き鏡花の心意気が感じられる 「金時計」(泉鏡花)(「泉鏡花集成1」) ちくま文庫 拙者昨夕散歩の際此辺一町以内の草の中に金時計一個遺失致し候間御拾取の上御届け下され候御方へは御礼として金百円呈上可仕候あーさー、へいげん...
「百年文庫034 恋」
三篇とも、「恋」の味わいは「ほろ苦さ」 「百年文庫034 恋」ポプラ社 「隣の嫁 伊藤左千夫」おはまは省作と並んで刈りたかったは山々であったけれど、思いやりのない満蔵に妨げられ、仏頂面をして姉と満蔵との間へはいった。おと...
「柳湯の事件」(谷崎潤一郎)
ホラーなのか、単なる法螺話なのか 「柳湯の事件」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅧ」)中公文庫 「僕は今夜、人殺しの大罪を犯して居るかも知れません。自分では全く分らないのです。人殺しがあったのはほんとうで、下手人は僕で...
「薤露行」(夏目漱石)
アーサー王の物語、いや、ランスロットの情痴話 「薤露行」(夏目漱石)(「倫敦塔・幻影の盾」)新潮文庫 百、二百、簇がる騎士は数をつくして北の方なる試合へと急げば、石に古りたるカメロットの館には、只王妃ギニヴィアの長く牽く...
「甚七南画風景」(坪田譲治)
行間から浮かび上がる作者の「願い」 「甚七南画風景」(坪田譲治)(「百年文庫043 家」)ポプラ社 甚七老人は齢八十で、楽しみは方々を見物して廻ることであった。遠いところではない。八十年の生涯に記憶に残る近くの石橋である...
「創造」(谷崎潤一郎)
美は即ち滅び、その美学、谷崎潤一郎の世界 「創造」(谷崎潤一郎)(「潤一郎ラビリンスⅩⅣ」)中公文庫 「男が女から妖艶な柔かみを借りて来た時、始めてほんとうの美しさを発揮するのさ。人間に純粋の男や女がないと同じく、その肉...
「春の雁」(吉川英治)
本作品は大人の「恋」の物語です。 「春の雁」(吉川英治)(「百年文庫034 恋」)ポプラ社 「清吉さん、このお金の費い途がついたら、わたしを連れて、すぐ江戸を立ってくれますか」自分の胸だけで、もう決めていたような口吻だっ...