「動く指」(クリスティ)
なかなか始まらない、進展しない、登場しない…の面白さ 「動く指」(クリスティ/高橋豊訳) ハヤカワ文庫 片田舎の町リムストックで静養していた「私」のもとに届いた誹謗中傷の手紙。この町では最近、こうした怪文書が出回っている...
なかなか始まらない、進展しない、登場しない…の面白さ 「動く指」(クリスティ/高橋豊訳) ハヤカワ文庫 片田舎の町リムストックで静養していた「私」のもとに届いた誹謗中傷の手紙。この町では最近、こうした怪文書が出回っている...
日本ミステリ史の原点ともいえる作品集 「黒岩涙香探偵小説選Ⅰ」(黒岩涙香) 論創社 世の人情を穿ち事理を明らかにするものは小説なり。而して小説にもその種類甚だ多くして一概に述べ尽くし難しといえども、多くは淫奔の情態を説く...
その面白さは、殺人事件に限っていないこと 「シャーロック・ホームズの冒険」(ドイル/日暮雅通訳)光文社文庫 64年に及んだヴィクトリア女王の治世が末期を迎えた19世紀末には、大英帝国の繁栄とは裏腹に、社会のあちこちにいく...
状況把握が困難、ならばそれを味わいましょう 「急行列車内の謎」(クロフツ/橋本福夫訳)(「世界推理短編傑作集2」) 創元推理文庫 列車に発生した異常ブレーキ。原因を確認するためにコンパートメントを見回った車掌は、銃撃され...
ほろ苦さと切なさの漂う読後感ですが… 「交叉点」(丹羽文雄)(「百年文庫060 肌」)ポプラ社 妻の死をきっかけに自暴自棄となり、横浜の場末のアパートに流れ着いた川上。彼は隣室に住む高校生にも思える風貌の娘・友子に興味を...
表題どおり「生きたまま埋葬される恐怖」 「早過ぎた埋葬」(ポー/渡辺啓助訳)(「ポー傑作集」)中公文庫 興味津々として人に迫るけれど、さて普通の物語とするには余りに凄すぎると言ふやうな材料が幾らもある。したがつて世の常の...
読み手の思考で補う、それ自体が味わいどころ 「ズームドルフ事件」(ポースト/宇野利泰訳)(「世界推理短編傑作集2」) 創元推理文庫 醸造した酒を売りさばき、村を混乱に陥れているならず者ズームドルフを諫めるため、アブナー伯...
好男子と若夫人の恋愛遊戯の行方は…? 「いたずらな恋」(横溝正史)(「空蟬処女」)角川文庫(「横溝正史ミステリ 短篇コレクション⑥」)柏書房 自他共に認める好男子の磯部富郎は、音楽会で近づきになった五十嵐夫人から、自宅...
盲人探偵、使い分けする相棒二人 「ブルックベンド荘の悲劇」(ブラマ/井上勇訳)(「世界推理短編傑作集2」) 創元推理文庫 依頼人ホリヤーは、姉ミリセントが夫から殺されかけていることを、盲人探偵カラドスに打ち明ける。彼女は...
終わってみれば本格探偵小説 「探偵小説」(横溝正史)(「日本探偵小説全集9横溝正史集」) 創元推理文庫(「刺青された男」)角川文庫(「横溝正史ミステリ 短篇コレクション③」)柏書房 N駅の待合室で汽車を待つ「あたし」の...