「パニック」(安部公房)
安部が七十年前に描いた世界は、もはや現実として 「パニック」(安部公房)(「R62号の発明・鉛の卵」)新潮文庫 見知らぬアパートの一室で眼をさました「私」は、血まみれで倒れているKと、かたわらに転がっている、血のついたナ...
安部が七十年前に描いた世界は、もはや現実として 「パニック」(安部公房)(「R62号の発明・鉛の卵」)新潮文庫 見知らぬアパートの一室で眼をさました「私」は、血まみれで倒れているKと、かたわらに転がっている、血のついたナ...
描かれているはずなのですが…、ないのです 「第一の手紙~第四の手紙」(安部公房)(「題未定 安部公房初期短編集」) 新潮文庫(「安部公房全集001」)新潮社 見も知らぬ、聞きも知らぬ人に手紙を書くと言う、此の不可能に近い...
「逃亡者」「追跡者」そして「誘惑者」 「誘惑者」(安部公房)(「無関係な死・時の崖」)新潮文庫 「誘惑者」(安部公房)(「安部公房全集007」)新潮社 終列車出発後の待合室。大男は、そこにいた二人の女の一方を追い出し、ベ...
いかにして「漫画」となったか、それが味わいどころ 「働くということ」(黒井千次・池田邦彦)講談社 体験記のような新書が、漫画として生れ変わる、と聞いて驚いた。しかしいずれも人々が生きて行こうとする営みの中から生み出される...
何となくわかってきました。「働く」ということが。 「働くということ」(黒井千次) 講談社現代新書 こうしていつの間にか、「労働」はぼくにとっての文学の主題となり、小説の出発点となった。あまりにも漠として捉え難い現代を掴む...
真実でないこと・うそ・いつわり・虚偽・そらごと 「虚妄」(安部公房)(「題未定 安部公房初期短編集」) 新潮文庫 「虚妄」(安部公房)(「安部公房全集002」)新潮社 彼女が笑うのは見たことがない。まるで笑うために必要な...
行き着く先はやはり「人間とはなんぞや?」 「人間修行」(安部公房)(「安部公房全集007」)新潮社 あまりにも目立たない存在であるため同僚から「ヒラメ」と綽名されている平木は、ある時、自身に取り憑いている幽霊の姿が見える...
ベタな展開にみえながら…「幽霊」とはなんぞや? 「幽霊の墓」(安部公房)(「安部公房全集006」)新潮社 希望を失った若い男女が自殺した。男は片足が鉄の義足だったために無事沈んだが、女は助け上げられる。幽霊となった男は、...
わからないことこそが安部公房作品の味わいどころ 「天使」(安部公房)(「題未定 安部公房初期短編集」) 新潮文庫 無限を意味する灰色の六つの、いや五つ半の面と、半分の未来とに世界は仕切られている。お解りだろうか。実の所を...
安部の思考の行く先を想像する愉しみ 「飛ぶ男」「さまざまな父」(安部公房)(「飛ぶ男」)新潮文庫 ある夏の朝、たぶん四時五分ごろ、氷雨本町二丁目四番地の上空を人間そっくりの物体が南西方向に滑走していった。月明かりを背にし...