「夜行観覧車」(湊かなえ)
基本的にはミステリではなく、家族再生の物語 「夜行観覧車」(湊かなえ)双葉文庫 あのとき、ドアフォンが鳴らなければ、彩花に何かしていたかもしれない。たった一人の大切な娘のはずなのに、あの瞬間、まったく知らない他人、いや、...
基本的にはミステリではなく、家族再生の物語 「夜行観覧車」(湊かなえ)双葉文庫 あのとき、ドアフォンが鳴らなければ、彩花に何かしていたかもしれない。たった一人の大切な娘のはずなのに、あの瞬間、まったく知らない他人、いや、...
私たちの心をも明るく照らしはじめる 「とわの庭」(小川糸)新潮文庫 裸足のまま勝手口の前に立つ。チェーンを外し、ゆっくりとドアノブを左に回して扉を開ける。大丈夫。きっとこれからも、大丈夫だ。わたしはゴミの要塞をかき分けな...
「ささやか」でありながらも「確かな」生き方 「茗荷谷の猫」(木内昇)(「茗荷谷の猫」)文春文庫 絵を描いて細々と生計を立てている文枝は、最近思うような絵が描けなくなっていた。彼女は、月に一度来訪する緒方という男に絵を預け...
島は、過疎化が進行している日本の故郷そのもの 「望郷」(湊かなえ)文春文庫 閉幕式でスピーチしている姉の姿を見ながら、「わたし」は複雑な心境に駆られる。姉は二十年前に島を捨てて以来、音信不通だったからだ。姉は式典後、同級...
幸せな家庭の、幸せな「ぼく」の姿を 「キャベツ」(石井睦美)講談社文庫 すべての始まりはキャベツだ。そんなふうに言い出すと、このフレーズはなんかこう深遠な哲学的命題のように聞こえる。でもそうじゃないんだ。それは正真正銘の...
自らの心の中に「言葉の森を育てる」 「プチ革命 言葉の森を育てよう」(ドリアン助川)岩波ジュニア新書 どんな時代がこようと、どんな環境にあろうと、あなたの心に自由な飛翔があるなら、そしてそれを信じられるなら、フロンティア...
それでいて等身大の若さが漲っている 「動物学科空手道部1年高田トモ!」(片川優子)双葉文庫 「これしかない。大学生活を賭けるべき価値のあるもの」。大学入学早々、トモはそう決意し、空手道部に入部する。「いっさい女らしさを捨...
「生」と「死」を考えるための、大人の純文学作品 「ピスタチオ」(梨木香歩)ちくま文庫 ライターである棚のもとへ、アフリカ取材の仕事が舞い込む。愛犬の病、前線の通過、アフリカに生きた友人の死、棚の周囲に起きたいくつかのこと...
愛情はバトンのように受け渡され 「そして、バトンは渡された」(瀬尾まいこ)文春文庫 困った。全然不幸ではないのだ。少しでも厄介なことや困難を抱えていればいいのだけど、適当なものは見当たらない。いつものことながら、この状況...
それにしてもこの筋書きの構成力の高さ 「贖罪」(湊かなえ)双葉文庫 わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。そのどちらもできなかった...