「四月になれば彼女は」(川上健一)
それらを失ってしまった令和の現代こそ 「四月になれば彼女は」(川上健一) 集英社文庫 あの卒業式の三日後の一日こそがターニングポイントでありエポックメーキングなのだと強く思えるのだ。十八歳の、まだ坊主頭の、冬も終わりに近...
それらを失ってしまった令和の現代こそ 「四月になれば彼女は」(川上健一) 集英社文庫 あの卒業式の三日後の一日こそがターニングポイントでありエポックメーキングなのだと強く思えるのだ。十八歳の、まだ坊主頭の、冬も終わりに近...
成長した二人に出会える物語 「ミカ×ミカ!」(伊藤たかみ)文春文庫 最近、ミカのようすがおかしい。そう感じていたユウスケは、ヒロキから「ミカが畑山に告白してふられた」ことを聞く。複雑な感情を抱くユウスケだったが、同じクラ...
つながる「鎌倉文庫」「篠川母子」「シリーズ全篇」 「ビブリア古書堂の事件手帳Ⅳ」(三上延)メディアワークス文庫 資産家のガーデン・パーティを訪れた篠川大輔・栞子夫妻。しかしその娘・扉子、そして栞子の母・智恵子も同時に招か...
よく効く、でも猫は癒やさない 「猫を処方いたします。」(石田祥) PHP文芸文庫 「猫を処方します。しばらく様子を看ましょう」「これ、猫ですか?」「ええ、猫ですわ」「本物の猫?」「もちろんですよ。よく効きますよ。昔から猫...
「自立」「教養」そして「成長」が描かれている 「ルドルフとイッパイアッテナ」(斉藤洋)講談社文庫 トラックの荷台にのったまま気を失っていた黒猫のルドルフ。目が醒めたとき、そこは見たことのない東京の町だった。大きなからだの...
真実のピースを探しだし、自らの脳内に組み立てる 「Nのために」(湊かなえ)双葉文庫 みんな一番大切な人のことだけを考えた。一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。すべてを把握できなくても、大切な人を守れたのなら、それで...
その文学的楽しみこそ、本作品の最大の味わいどころ 「仲之町の大入道」(木内昇)(「茗荷谷の猫」)文春文庫 仕事を得て東京にやってきた青年・松原は、下宿の大家から「東京に詳しくなる仕事」を紹介される。「日曜日なら」と安請け...
神霊たちが行き交う妖しげな時空間 「宵山万華鏡」(森見登美彦)集英社文庫 女の子は勇気を振り絞って歩き始めた。姉に連れられて訪れた宵山で、繋いでいた手を離してしまい、一人になってしまったのだった。怖い思いに耐えて歩き続け...
交錯する三つの世界、二人の人間、一つの想い 「あの夏を泳ぐ 天国の本屋」(松久淳+田中渉)新潮文庫 ライバルでありながら、ともに水泳をやめた麻子と朝子。見知らぬアロハの老人に導かれ、「天国の本屋」で働くことになった麻子。...
「私」が抱く「複雑な思い」こそ、味わいどころ 「動物学科空手道部2年高田トモ!」(片川優子)双葉文庫 二年生になったトモは、空手道部に新しく入部してきた一年生と接するうちに、不安に駆られる。後輩たちに追い越されたらどうし...