「失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選」(デュレンマット)
常習性、いや中毒性すら持っている厄介な傑作群 「失脚/巫女の死」(デュレンマット/増本浩子訳) 光文社古典新訳文庫 デュレンマットは一九二一年生まれのスイスの作家です。主に劇作家として大活躍しました。特に五〇年代から六〇...
常習性、いや中毒性すら持っている厄介な傑作群 「失脚/巫女の死」(デュレンマット/増本浩子訳) 光文社古典新訳文庫 デュレンマットは一九二一年生まれのスイスの作家です。主に劇作家として大活躍しました。特に五〇年代から六〇...
人間の存在の根幹に深く思いを巡らせるべき 「動物」(武田泰淳)(「百年文庫045 地」)ポプラ社 ナラ、カシ、クワ、コクワ、アケビ、ヤマブドウ、木の実の類がほとんど全滅です。食料欠乏に困り抜いた動物たちは、危険を冒して村...
どこまでもクール、リアル、ニヒル 「俊寛」(芥川龍之介)(「芥川龍之介全集4」)ちくま文庫 「俊寛」(芥川龍之介)(「羅生門・鼻」)新潮文庫 俊寛様の話ですか?俊寛様の話くらい世間に間違って伝えられた事は、まずほかにはあ...
誰にも教えず一人でこっそり愉しみたい作家 「帰宅」「小さな弟」「いちばん罪深い者」「ふたりの乞食」「強情な娘」「老人の死」(フィリップ/山田稔訳)(「百年文庫043 家」)ポプラ社 四年ぶりに家に帰ってきたラルマンジャは...
安部の思考の行く先を想像する愉しみ 「飛ぶ男」「さまざまな父」(安部公房)(「飛ぶ男」)新潮文庫 ある夏の朝、たぶん四時五分ごろ、氷雨本町二丁目四番地の上空を人間そっくりの物体が南西方向に滑走していった。月明かりを背にし...
日常を切り取り、コラージュのように 「日本三文オペラ」(武田麟太郎)(「百年文庫047 群」)ポプラ社 アパートと云っても――いや、そんな何となく小綺麗で、設備のよくととのつた西洋くさい貸部屋を意味する言葉を使ってはいけ...
その奥行きの深さを十分に堪能すべき 「デイジー・ミラー」(H.ジェイムズ/小川高義訳)新潮文庫 スイス・ヴェヴェーで出会った美女・デイジーミラーは、今はローマに滞在していた。伯母からの手紙を受け取ったウィンターボーンはロ...
まるで暗号を読み解くかのような 「千鳥」(鈴木三重吉)岩波文庫 夏に避暑に訪れて以来、二度目となるある小さな島へやってきた「自分」。逗留先の小母さんの家に上がると、夏にはいなかった少女・お藤さんがいた。彼女とは以前からの...
それにしても菊池寛の脚色は見事です 「俊寛」(菊池寛)(「百年文庫048 波」)ポプラ社 「俊寛」(菊池寛)(「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」) 新潮文庫 それは、彼が鹿ヶ谷の山荘で飲んだ如何なる美酒にも勝って居た。彼がその...
「ささやか」でありながらも「確かな」生き方 「茗荷谷の猫」(木内昇)(「茗荷谷の猫」)文春文庫 絵を描いて細々と生計を立てている文枝は、最近思うような絵が描けなくなっていた。彼女は、月に一度来訪する緒方という男に絵を預け...