「雪」をテーマにした素敵な8冊

テーマ別お薦め本8冊File-002

「雪」は限りないロマンを人間に与える

「雪のひとひら」(ギャリコ)

ある寒い日に生まれた
「雪のひとひら」。
地上に舞い降りたときから
彼女の長い旅が始まった。
伴侶となる
「雨のしずく」との出会い、
そして新たなる命の誕生。
流れていく「雪のひとひら」は、
最後の瞬間、
自らの生の意味を深く悟る…。

例年になく、
積雪の多い冬となっています。
物語ではロマンチックな「雪」も、
現実世界では
ただの厄介者に過ぎません。
などと野暮なことをいわず、
日本に生まれたからには四季を愉しむ。
四季を愉しむからには冬も愉しむ。
冬を愉しむからには雪も愉しむ。
そんな心の余裕を持ちたいものです
(私はいまだに持てていないのですが)。

「雪だるまの雪子ちゃん」(江國香織)

空から降ってきた
雪だるまの雪子ちゃんは、
画家・百合子さんの物置小屋を
住処とする。
雪子ちゃんは
トランプや夜更かしや
バターが大好きな、
「野生の」雪だるまだった。
ある日、
雪子ちゃんは小学校を訪れ、
校庭のブランコに乗る…。

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というわけで、「雪」にまつわる本を
8冊セレクトしてみました。
最初の3冊は「雪」そのものです。
ギャリコの名作「雪のひとひら」は、
主人公が「雪」。
江國香織の素敵なメルヘン
「雪だるまの雪子ちゃん」も
雪からできた雪だるまが主人公です。
そして中谷宇吉郎の名著「雪」は、
そのものズバリの「雪」の研究です。
「雪のひとひら」
「雪だるまの雪子ちゃん」は
情感たっぷりに、
中谷宇吉郎「雪」は論理的に、
それぞれ「雪」に迫ることができます。

「雪」(中谷宇吉郎)

昭和初期、
日本がアメリカから購入していた
最新式のラッセル車が、
たびたび故障している
現実を取り上げ、
問題点を指摘しています。
そして、「日本の雪の性質を
根本的に研究することによって、
目指すべき到達点を
提示しています。
「第1章 雪と人生」

「絵描きの植田さん」(いしいしんじ)

悲しい事故で
恋人と聴覚を失ってしまった
絵描きの植田さん。
彼はいつも
高原の湖の畔から見える
自然の風景を描いている。
ある日、凍りついた湖を渡って、
イルマとメリの母娘が
越してくる。
メリもまた、
耳が聞こえなかった…。

次の3冊は「雪」が背景となっている
作品たちです。
「絵描きの植田さん」は
雪の湖畔を舞台にして
素敵な物語が展開されます。
「ミラクル」は
雪の降らないはずの町に
雪が降ったことから奇跡が起きます。
そして「百年文庫025 雪」は、
雪が鍵となっている
味わい深い3篇が収められています。

「ミラクル」(辻仁成)

息子のアルと暮らす
ピアニストのシドは、
亡き妻を思い、
日々悲しみに暮れながら過ごす。
シドはアルに
「雪が降る日にお母さんは
帰ってくる」と教える。
母を知らないアルは、
2人の幽霊・
ダダとエラソーニと出会い、
友達になる…。

「百年文庫025 雪」

母が死んでから半年余りになる。
此頃になって、
頻りにその母の面影が
懐しく偲ばれる。
母は私には第二の母だった。
母が継母だということを
知ったのは、私が
六つか七つ位の頃のことだった。
私はどんなに母を苦しめ、
父を悩まし…。
「母 加能作次郎」

最後の2冊は絵本です。
「雪の結晶ノート」は
中谷宇吉郎の「雪」を
絵本化したような作品です。
「てぶくろ」は
世界的に有名な名作絵本です。
どちらも絵本でしか表現し得ない
魅力ある世界を創り上げています。

「雪の結晶ノート」
 (カッシーノ&ネルソン)

「雪の結晶」の写真が
余すところなく
収録されています。
雪の結晶は、
なかなか完全な形で
落ちてくることが少ない上、
写真を撮ろうとして採取すると、
すぐ融けるのです。
カッシーノさんは
おそらくかなりの
試行錯誤をしたはずです。

「てぶくろ」(ウクライナ民話)
 (ラチョフ絵/内田莉莎子訳)

おじいさんが雪道で
落としていった片方の手袋。
「ここでくらすことにするわ」と
最初に入り込んだのは
ねずみだった。
そこへかえる、うさぎ、
きつね、おおかみ、いのしし、
くまが次々に訪れる。
一つの手袋に住みついた
動物たち…。

雪国に住む私にとっては、
雪が降らない地域が
羨ましいかぎりです。
しかし、職業柄、
ALTで派遣されている先生たち
(もちろん外国人)に話を聞くと、
「雪」にあこがれて日本の、
それも雪国を希望した方が
意外に多いのです。
「雪」は多くの苦痛を与える一方で、
限りないロマンをも
人間に与えているのでしょう。

それはともかく、
雪がこれ以上降らないことを祈ります。

(2022.1.25)

S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像

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