大いに歓迎！リニューアルによる｢新名盤｣の登場
「新時代の名曲名盤500＋100」
（｢レコード芸術｣編）音楽之友社
個人が選んだ名盤ガイドは
多数あるが、
8名という複数の投票によって
選定する方法を採っている
名盤ガイドは他に例を見ず、
信頼度が非常に高い。
投票結果についての
講評も記されている。
2023年現在の最新名盤ガイドの
決定版…。
(出版社HP｢内容紹介｣より)
以前取り上げた音楽之友社刊
｢最新版 名曲名盤500｣の
リニューアル版が登場しました。
迷った末に購入しました。
正解でした。
時間があるたびに頁をめくっています。
私がこれまで購入した分だけでも、
93年刊、99年刊、
00･03･04年刊(このとき3分冊)、
11年刊、17年刊と、
これで6代目になります。
11年刊まではベスト300だったのが、
前回17年刊で500に増え、
今回さらに600まで増量、
情報量は大きくなりました。
今回画期的だったのは、
選者を前回とは大きく入れ替え、
若返りを図ったことです。
これによって選定されるディスクが
大きく変動し、
21世紀に録音された音盤が数多く
取り上げられることになりました。
ネット上のレビューを見ると、
｢古い名盤を捨てて新しい名盤を
選ぼうとしただけではないか？｣という
批判的な視点もあります。
でも、私はそれでいいと思っています。
実は今回、
本書を購入するのを迷っていたのは、
これまでは版が変わっても内容は
あまり大きく変わっていないからです。
バッハのピアノ曲を見れば、
いつでもトップはグレン･グールド、
ベートーヴェンの第9交響曲は
フルトヴェングラーといったように、
名盤が固定されつつあり、
買い換える意味が
見いだせなかったのです。
今回、店頭で中身を確認し、
それぞれの版の選定の
｢新しさ｣に感動し、購入した次第です。
たしかに、新しく登場した音盤が、
過去の名盤と比べたとき、
明らかにそれより
優れているかと問われれば
判断に迷うものが多いでしょう。
しかし、クラシック音楽を
十分に聴き込んだ人間なら、
それは自分の耳で
判断すればいいだけの話です。
それよりも、
新しい情報が必要だと思うのです。
あまた現れる新盤の中で、
どれを購入していくか、
その拠り所となるにふさわしい
リニューアルだと感じます。
これからクラシック音楽に
入門しようとしている
若い方々にとっても、
古くてカビの生えたような
｢名盤｣よりも、
現代的感覚で録音された｢新名盤｣から
入っていった方が、
わかりやすいと思うのです。
そしてそうした方々も、
クラシック音楽に慣れてくれば、
自然と過去の｢名盤｣に
手を出してくるはずだと思うのです。
私は今回のリニューアルによる
｢新名盤｣の登場を、大いに歓迎します。
ただし、残念な点もあります。
｢名盤｣の選定には異論はありませんが、
もう一方の｢名曲｣の選定には
いささか難ありだと
言わざるを得ません。
古楽や現代音楽、
そして日本人作曲家の作品が、
これまで同様、かなり少ないのです。
古楽については、
ヘンデルのオペラ
｢ジューリオ･チェーザレ｣や
｢リナルド｣などは音盤も増え、
演奏機会も多くなり、
｢名曲｣にノミネートされて
当然の位置に来ているはずです。
ルネサンスや中世の音楽も
あっていいはずです。
｢グレゴリオ聖歌集｣、
マショーの｢ノートル=ダム･ミサ曲｣、
モンテヴェルディの｢ポッペアの戴冠｣、
シュッツの声楽曲等々、
いつになったら｢名曲｣入りするのかと
思わざるを得ません。
日本人作曲家についても、
武満徹の楽曲が一つも入っていない
(というよりも日本人作曲家の名前が
一つもない)のはどうしたことか？
武満徹や伊福部昭、團伊玖磨の音楽は、
すべて、本書に取り上げられた
600曲の｢名曲｣より
劣っているというのでしょうか。
自分の国の文化人を
きちんと評価しようとしない国民性は
何か間違っていると思います(過度に
評価しすぎるのも問題なのですが)。
6～7年の間隔で更新されているので、
次回2030年の
｢名曲名盤500｣に期待しましょう。
それまで本書で十分に
クラシック音楽を
愉しんでいきたいと思います。
（2023.5.23）
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