「西洋音楽史」(岡田暁生)

古楽への理解が進むとともに、疑問が氷解しました

「西洋音楽史」(岡田暁生)中公新書

本書の目的は、
西洋芸術音楽の歴史を
川の物語として語ることにある。
単に音楽史上の重要な人物名や
作品や用語などを、
時代順に洩れなく
列挙したりすることは、
私の意図するところではない。
この本の主役は
西洋音楽の「歴史」…。

クラシック音楽を聴き続けて30数年。
聴いて愉しければ
それでいいではないかと、
難しいことを抜きにして
聴き続けてきましたが、
ここ数年、迷いが生じていました。
これまで聴いてきたロマン派の音楽、
特に交響曲に「飽き」が来てしまい、
その結果として
古楽を聴き始めようとしたのですが、
バッハの音楽が壁となり、
それ以前の音楽へと
進む勇気が持てなかったのです。
それで縋るように読んだのが本書です。
本書を読んで以来、
古楽への理解が進みました。
というよりも、
長年の疑問が氷解しました。

【本書の章立て一覧】
まえがき
第一章 謎めいた中世音楽
第二章 ルネサンスと「音楽」の始まり
第三章 バロック―既視感と違和感
第四章 ウィーン古典派と啓蒙の音楽
第五章 ロマン派音楽の偉大さと矛盾
第六章
 爛熟と崩壊
  ―世紀転換期から第一次世界大戦へ
第七章 二〇世紀に何が起きたのか
あとがき
文献ガイド

本書を読んで氷解した疑問①
なぜロマン派が主流となったのか?

実は度々クラシック音楽に飽きてきた
時期がありました。
あるときはジャズに手を出し、
あるときは洋楽をつまみ食いし、
またあるときは
80年代ポップスに思いを馳せ、
そのたびにクラシック音楽に
舞い戻ってきました。
飽きる原因は、ロマン派の音楽中心に
聴いてきたからです。
なぜロマン派がクラシック音楽の
主流となったのか?
第五章に書かれてあります。

「実証科学万能の十九世紀は、
 もはや誰も宗教など
 信じなくなってしまった
 時代だったわけだが」
「交響曲や弦楽四重奏曲や
 ピアノ・ソナタといった器楽曲は、
 宗教的敬虔をもって
 崇められることになる」

確かに、私がこれまで聴いてきた音楽は
ドイツ系のベートーヴェン、
シューベルト、シューマン、
ブラームス、ワーグナー
マーラーだったのですから、
そうした十九世紀の流れが
先入観となっていたのかも知れません
(というよりも、CDのリリースが
そうした曲中心であり、
一つのブームがつくられていた)。

本書を読んで氷解した疑問②
なぜバッハが壁となっていたのか?

数年前まで古楽の領域
(バッハ以前の音楽)を
敬遠してきました。
バッハの音楽が分かりにくく、
それ以前の音楽に
手を出しにくかったのです。
なぜバッハは難しいのか?
第三章に書かれてありました。

「バロック音楽史の見取り図を
 ややこしくしているのは、
 バッハという「時代の最も偉大な
 作曲家」が、必ずしも文句なしに
 「時代の最も典型的な作曲家」とは
 いえない点にある」。
「彼
(バッハ)は同時代的に見れば
 むしろ孤高の人であって、
 活動が時代相を典型的な形で
 映し出しているという点であれば
 ヘンデルやテレマンらを
 挙げるべきだろう」

続いて、バッハの音楽の特殊性や
分かりにくさを丁寧に解説しています。
おそらくバッハが障壁になって
古楽への入門をためらっていた
リスナーは、私以外にも
多いのではないかと思われます。
バッハをスルーして、
同じ年に生まれた
ヘンデルやスカルラッティを
聴けばよかったのだと、いうことを
発見しました。

本書を読んで氷解した疑問③
なぜ古楽はわかりにくかったのか?

ロマン派とは異なり、
古楽の作曲科の音楽は(バッハとも
異なる)分かりにくさがありました。
なぜ古楽は分かりにくいのか?
同じく第三章に書かれてありました。

「互いの区別もなかなかつかない
 群小作曲家が無数にいて、
 ところどころに「大作曲家」たちが
 孤立して立っている」
「ジャンルの問題も、バロック音楽を
 分かりにくくしている」
「ところどころで
 よく見知った風景に出くわすのだが、
 その隣にまったくなじみのない
 風景が広がったりしていて、
 そのせいで方向感覚が狂い、
 遠近感がうまくつかめない時代」

それがバロックなのだそうです。

原因が分かれば、
進む方向も自然と理解できます。
私は現在、バロックやルネサンス、
中世の音楽に、
少しずつ踏み出しています。
まだまだクラシック音楽を
愉しめそうです。
勉強するということはやはり大切です。
楽しみを広げるための勉強、それが
大人の「学習」なのかも知れません。

〔クラシック音楽鑑賞について〕
もう一つ、サイトを運営しています。
「ラバン船長の音盤は愉し」も
よろしくお願いします。

〔岡田暁生の本〕
音楽史についての書籍が
いくつか出版されています。
近いうちに読んでみたいと思います。

(2022.10.25)

13748526によるPixabayからの画像

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