「太平洋戦争 日本の敗因2」(NHK取材班編)

告発されているのは日本における「無責任体質」

「太平洋戦争 日本の敗因2」
(NHK取材班編)角川ソフィア文庫

「太平洋戦争 日本の敗因2」

米軍から跳ね返された日本兵は、
武器・弾薬・食糧の
補給がないまま、
ジャングルにおおわれた山中を
さ迷い歩き、
消耗を重ねていった。
ぼろぼろになった兵士たちが、
飯盒だけを片手にさげて
彷徨する姿は、
想像するだに痛ましい…。

先日取り上げた
「太平洋戦争 日本の敗因」シリーズの
第2巻です。
副題は「ガダルカナル 学ばざる軍隊」、
おのれを知らず敵を知らず、
自身の面子や体面にこだわり、
机上の空論だけで
一万五千人の兵士の命を散らした
当時の戦争責任者たちに
憤りを感じます。
本書から読み取れるのは、
最高責任者の「無責任体質」という、
日本人固有の「体質」です。
特に衝撃を受けた部分を
拾い上げてみます。

〔本書の内容〕
まえがき
プロローグ
1 知られざる島
2 見たことのない戦争
3 汝の敵を知れ
4 繰り返される失敗
5 袋小路の現実
参考文献・あとがき

第一章「知られざる島」には、
対米戦争における日本首脳部の
「戦争見通し」について
書かれた一節があります。
「対米英蘭蒋戦争終末促進に
関する腹案」は、
①南方の資源地帯を制圧し、
米艦隊をおびき出して撃滅させる、
②米国の支援を断ち切り、
蒋介石政権を屈服させる、
③ドイツ・イタリアが
イギリスを屈服させる、
④中英の屈服により
米は戦争継続の意思を失う、
といったものなのです。
長期的視野もなければ
戦略的プランもない、
他力本願の楽観的希望的観測に
過ぎないのです。
アメリカとどのように戦うかの
見通しがないままに、
開戦に踏み切ってしまった
証拠となっています。

第二章「見たことのない戦闘」には、
日本軍が日露戦争以来の
歩兵戦術最優先、
近代兵器はその飾りに過ぎないと
考えている様子と、
この根拠の考察が述べられています。
発端は日露戦争の
勝利にあったと考えられています。
日露戦争が、国力の限りを尽くして
西欧水準にまで兵器を揃え、
その国力が尽きる前に
米国を仲介として
早期の戦争終結を図ったギリギリの
「勝利」であったにもかかわらず、
その勝因を「精神主義」に求め、
それを自ら信じ込んだことから、
間違いが生じたことを
明らかにしています。
最新兵器の銃弾の嵐の中を、
真っ正面から白兵突撃する作戦形態は、
そうした「精神主義」の産んだ
愚行だったのです。

第三章「汝の敵を知れ」では、
「捕虜」に対する日本の想定の
甘さについても言及されています。
日本兵の捕虜が、機密情報までも
簡単に提供することについて、
「軍部は、捕虜になった場合のことを
何も訓練していないのではないか」、
それは「日本兵は降伏することなど
許されていなかったので、
捕虜になることがあるなどと
想像しなかった」のだというのです。
想定されるべきことが
想定されていない、
これが日本をさらに窮地に
追い込んだことは間違いありません。

それらによる失敗の連鎖が、
第四章「繰り返される失敗」に、
詳細に書かれています。
驚くのは、
その失敗の繰り返しの中にあってさえ、
責任者は失敗を
認めようとはしていないことです。
「火力の支援なき米兵は脆弱」という
「仮定」から論理を組み立て、
「我が白兵力は依然決定的威力を有す」と
結論づけています。
「火力の支援なき米兵」も
あり得なければ、
「白兵」戦が行われる可能性も
ゼロであり、
虚構に虚構を重ねた分析、というよりも
単なる言い逃れにすぎないのです。

そして最悪の結果を招いてからの
撤退の決断がなされた経緯が、
第五章「袋小路の現実」で
述べられています。
その最後の一文が印象的です。
「ガダルカナル以降、
 日本軍はアメリカ軍と戦い、
 ことごとく敗北することになった。
 サイパン、硫黄島、沖縄、
 それらの島々ではもはや
 撤退する余裕もなく、
 日本軍は玉砕の道を
 たどったのであった」

一通り読み終えて感じるのは、
やはり「これは戦時中の
特殊な事例なのか」ということです。
そうではないでしょう。
政治や企業のトップが、
体面の保持のために
展望に欠ける決断を行い、
誰もその責任を取らない、
蜥蜴の尻尾切りのように
末端だけがその責任を負わされる、
それは戦時中のみならず、
戦後の昭和・平成、
そして令和の現代でも見られる、
日本特有の現象なのです。
「森友問題」に関わる「公文書改竄問題」、
「アベノマスク」をはじめとする
初期の「コロナ対応の失敗」、
未だ決算額さえ示されない
「東京五輪の不透明会計」と
その一因とも考えられる
「五輪汚職」等々、
責任がうやむやになったまま
放置された「失敗」は、現代においても
枚挙にいとまがありません。

約80年前の戦争の実態から
私たちが学ぶべきは、
戦争を引き起こした
「日本人の体質」ではないかと
思うのです。
それを研究し、いかに
改善していくかが問われています。
80年かけてもできなかったことが
一朝一夕にできるはずなどありません。
私たち一人一人の地道な意識改革こそが
求められているのです。

〔「太平洋戦争 日本の敗因」全6巻〕
1 日米開戦 勝算なし
2 ガダルカナル 学ばざる軍隊
3 電子兵器「カミカゼ」を制す
4 責任なき戦場 インパール
5 レイテに沈んだ大東亜共栄圏
6 外交なき戦争の終末

かつてこの本を
すべて所有していたのですが、
処分してしまいました。
先日、丸山静雄著
「インパール作戦従軍記」を読んで
ふと思い出し、
全6冊を中古で購入し直し、
再読している最中です。
手放したとしても、
再入手は容易になりました。
本は今や、人類の共有財産です。

(2023.5.30)

Hands off my tags! Michael GaidaによるPixabayからの画像

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