「脳のはたらきがわかる本」(小長谷正明)

脳を知ることは、自分自身を知ること

「脳のはたらきがわかる本」
(小長谷正明)岩波ジュニア新書

「脳のはたらきがわかる本」

脳や神経って
何をしているのでしょうか?
かんたんにいってしまえば、
からだの中に
はりめぐらされている
コンピュータ・ネットワークです。
脳とせき髄、
それらから筋肉や皮膚などに
いきわたっている
末しょう神経からなっています…。

とかく科学の本は難しいのですが、
そのなかでも「脳」について書かれた本は
難しい。そう思っていました。
ところが、
そうでない本に出会いました。
本書「脳のはたらきがわかる本」です。
これは中学生に
自信を持って薦められる良書です。

〔本書の内容〕
はじめに
1 なんだろう、脳みそって?
2 ビジュアルとオーディオ
3 しびれちゃった
4 ハッピーで舞い上がる
5 メモリーしよう
6 考えなくっちゃ
7 さあ、行動だ
8 胸キュン、ドキドキ
9 おやすみなさい
あとがき

自信を持って「ここがオススメ」①
文も図も平易で簡単わかりやすい

自然科学の本
すべてにいえることですが、
なぜ難しいかというと、
専門用語が並んでいるからです。
専門知識がないから
読もうとしているのに、
専門用語を多用して説明されたのでは
わからないのは当然です。
その点、本書は、
専門用語の使用を極力抑え、
平易でわかりやすい言葉で
表現しているのです。
上に記した本書の一節や
各章の小見出しを見ても、
平易でわかりやすく、興味関心を
喚起するものとなっています。
中高生向けに書かれたものなので
当然といえば当然なのですが、
この岩波ジュニア新書でさえ、
(自然科学の本に限り)
わかりにくいものはいくつもあります。

それに加え、
脳のはたらきの具体的事例を、
著者自らの幼少期の体験から
選び出して説明している点も、
わかりやすいことこの上なしです。
さらには添付されている図版も大きく
わかりやすいものとなっています。
すべてが中高生に
わかりやすく伝えようとする
意識のもとにつくられているのです。

自信を持って「ここがオススメ」②
「脳のはたらき」そのものに焦点化

さらに、脳という
器官そのものについてではなく、
「脳のはたらき」そのもの、
つまり脳が引き起こす知覚や認識、
判断や行動、記憶や感情に焦点をあて、
内容を精選して
書かれてあることもまた、
わかりやすさにつながっています。
脳そのものについて書かれたものは、
どうしても専門用語が増え、
その割にそうした内容が
実生活にどう結びついているか
ちんぷんかんぷんな本も
少なくありません。
本書は実に丁寧に「脳のはたらき」
そのものについて解説してあります。

自信を持って「ここがオススメ」③
健康に生きるための知識が盛沢山

そして何よりも、
よりよく生きるためには
どうするかについて触れられているのが
素晴らしい点です。
快不快の認知システムを説明しながら
薬物の危険性を説く、
記憶の仕組みを解説しながら
テスト勉強の一夜漬けの
効果を検証する、
内分泌に触れながら
心の落ち込みが
病を呼び起こすことについて
注意喚起する。
心も身体もまだまだ未熟な中高生に
役立つことばかりです。

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今日のオススメ!

もちろん、中高生にとっての良書は、
大人の私たちにとっても
良書であることに間違いありません。
私自身も
新しい知見に触れることができ、
これからの授業に生かせそうです。

一般的に「脳細胞は
生まれたあとは増えない」と
理解していたのですが、
近年の研究により
「海馬歯状回の顆粒細胞は生後に
増えていく」ということが
明らかになったようで、
認識を新たにしました。
レム睡眠・ノンレム睡眠の解説や、
ヒトの体内時計は
一日25時間周期というのも
興味深く読むことができました。

脳を知ることは、
自分自身を知ることでもあり、
自分の生き方を考えることにも
つながります。
中高生にぜひ薦めたい良書であり、
大人のあなたにも強くお薦めしたい
一冊です。いかがですか。

〔関連記事:脳について書かれた新書〕

〔関連記事:岩波ジュニア新書〕

(2023.11.20)

Gordon JohnsonによるPixabayからの画像

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