
悪人判明…ところが人情味溢れる解決
「堕天使の冒険」
(パーシヴァル・ワイルド/巴妙子訳)
(「悪党どものお楽しみ」)ちくま文庫
「堕天使の冒険」
(パーシヴァル・ワイルド/橋本福夫訳)
(「世界推理短編傑作集3」)
創元推理文庫
「カードには
印がつけられている」。
ゲームを観察していたトニーは
そう言い切る。
驚くほど勝ち続けてきた
ロイに対して
不信感を持った仲間からの
依頼を受けていたのだ。
疑惑を暴いたと確信した
トニーだったが、
話を聞いたビルは…。
またまた一風変わった味わいの
ミステリに出会うことができました。
パーシヴァル・ワイルドの本作品、
賭博ミステリ、もしくは
カード・ゲーム・ミステリとでも
いうべきでしょうか。
ブリッジにおける
いかさまを見抜くというものです。
〔主要登場人物〕
トニー・クラグホーン
…カード・ゲームのいかさまを
看破するよう依頼を受ける。
ビル・パームリー
…いかさまの看破の件をトニーから聞き
その真相を解明する。
ロイ・テリス
…カード・ゲームにおける連続勝利から
いかさまの疑念を受ける。
ストレイカー、ビリングス、チザム、
ホチキス、ベル
…ロイとともにカード・ゲームに
参加していたメンバー。
ロイの不正を暴くよう
トニーに依頼した。
「支配人」
…ロイらがカード・ゲームを行った
ヒマラヤ・クラブの支配人。
アシュリー・ケンドリック
…かつてヒマラヤ・クラブの
会員だった男。突然姿を消した。
ヴェナー
…かつてヒマラヤ・クラブの
会員だった男。
本作品の味わいどころ①
大勝利…ところが名探偵はほかにいた
前半部、探偵役と思われるトニーが、
見事にいかさまを暴きます。ところが、
いかさまを暴いたというよりは、
暴けなかったから鎌をかけて
自供を引き出そうとした、という方が
正確です。
「カードに印がつけられている」と
言い切った割には、
どこにどんな印が刻まれているかまでは
言及していないのです。
しかしその場のロイ以外のメンバーが
納得しているので、何となく事件が
解決したように見えるだけなのです。
それを聞きつけたビルが、
その背後にある複雑な事情を
解き明かしていきます。
本作品単独ではわかりかねるのですが、
ビルとトニーの二人は、
どうやら師弟関係的な間柄のようです。
本当の探偵役、
ビル・パームリーの探偵術を
まずはじっくり味わいましょう。
それにしても、トニーが有罪の決め手を
提示できていない一方、
いかさまを疑われたロイにしてみれば、
無実を証明する方法がないのです。
これがおそらく
「冤罪の生まれる構図」なのだろうと
考えてしまいます。
本作品の味わいどころ②
一件落着…ところが真犯人は二転三転
で、早々とロイの無実が
明らかになるのですが、
では真犯人は誰か?
真犯人像は二転三転、いや、
もっと転換します。
ロイ
→ロイ以外の五人の中の誰か
→トニー(なんと前半の探偵役が容疑者)
→○○○(の組織的犯行)
→□□□
→△△△と、なんと五転するのです。
それは探偵役ビルが無能なのではなく、
筋道を立てて思考した結果なのです。
まず疑われるべきは○○、
しかしその可能性はない、
次に疑われるべきは…と、
一切の可能性を排除せず、
論理的に突き詰めていった結果としての
五転です。その結果、
事件は想像もできない方向へと
展開していくのです。
このビルの探偵術によって明らかになる
犯罪の全貌を、
次にじっくり味わいましょう。
本作品の味わいどころ③
悪人判明…ところが人情味溢れる解決
だからといってビルは
犯人を糾弾するわけではありません。
その立場に寄り添い、
しっかりと情けをかけている
(真相を話した謝礼金を
約束の10倍支払っている!)のです。
さらに疑いをかけてしまった
ロイに対する対応もしっかりと語られ、
八方丸く収まっているのです。
この人情味溢れる落としどころこそ、
本作品の最大の
味わいどころとなるのです。
たっぷりと堪能しましょう。
こんな素敵な筋書きを考えつくなんて…
ところが、なんと
元となる実話があることが
末尾で語られます。
何から何まで驚かされる逸品です。
ぜひご賞味ください。
(2025.2.7)
〔「悪党どものお楽しみ」〕
シンボル
カードの出方
ポーカー・ドッグ
赤と黒
良心の問題
ビギナーズ・ラック
火の柱
アカニレの皮
エピローグ
堕天使の冒険
付録/解説
〔パーシヴァル・ワイルドの本はいかが〕
〔「世界推理短編傑作集3」〕
三死人 フィルポッツ
堕天使の冒険 ワイルド
夜鶯荘 クリスティ
茶の葉 ジェプスン&ユーステス
キプロスの蜂 ウィン
イギリス製濾過器 ロバーツ
殺人者 ヘミングウェイ
窓のふくろう コール
完全犯罪 レドマン
偶然の審判 バークリー
〔「世界推理短編傑作集」はいかが〕

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